就職氷河期のさなか、大宮さん(仮名・44歳)が入った会社は業界中位の「消費者金融」。約17年勤めた大宮さんがそこで目にしたのは“日本の暗部”でした……。ルポライターである増田明利氏の著書『今日、借金を背負った 借金で人生が狂った11人の物語』(彩図社)より、「お金を貸す側」の本音をみていきましょう。

お金を貸す価値のない人間はいます…業界歴17年、就職氷河期を経験した44歳“元・金融マン”が語る「消費者金融」が“あえて高金利”なワケ【ルポ】
状況はどんどん悪化…大宮さんは「消費者金融」の退職を決断
それでも、これが仕事なんだからと割り切って働いていたが、状況はどんどん悪くなっていった。
「まず総量規制が定められたので貸付できる客の数がガクンと減ってしまいました。金融業は金を貸してその利息で利ざやを稼いでいるわけだから大打撃でした」
決定的だったのは2006年1月に最高裁がグレーゾーン金利は違法だと判断したこと。翌2月には貸金業の監督を行う金融庁が最高裁判決を受けて貸金業法施行規則を改正。客は払い過ぎた利息を過去に遡って取り戻せるようになった。
「過払い金の返還請求が山のように来ました。司法書士や弁護士からもガンガン電話がかかってきたり内容証明の郵便が届いたりしましたね」
返還額は過払いが発生した時点からその額に応じた利息が付く。
「利息は5%ないし6%。過払いが多額で期間が長いほど利息は多く付くんです。人によっては軽く100万円を超える金額を返さなければなかった。超低金利の時代に5、6%の利息が付くのだから、借金に苦しむ債務者から一転して、払い過ぎた利息を返せと強気になりました。それまでの立場から逆転して、今度は俺がお前らから金をむしり取ってやると凄まれたこともありました」
消費者金融はあくどい、怖いというイメージが更に増幅されたものだから新規の優良顧客を獲得することは不可能だった。過払い金の返還額も月を追って増えていく。
「11年に入ってからはリストラに次ぐリストラでした。まず店舗を統合する。次は同業大手にならって無人店舗にする。人員も大幅にカット。だから泥船から逃げ出すように辞めていく人が後を絶ちませんでした」
大宮さんは本部の債権回収部門に異動になったが、客は利息を払わなくなり債権がどんどんコゲつくようになった。回収ノルマも達成できなくなった。
「上はいくらでもいいから回収しろと言っていましたが、無理なものは無理です。自分より職位が上の人もとうとう逃げ始めたので自分もここらが潮時と感じて退職した次第です。いよいよ駄目になって民事再生法や自己破産を申請したら退職金がもらえませんから」