個人商店の経営者は、消費者金融を“戦略的”に使う

一方で飲食店、個人商店の経営者は事故のない安全な顧客だった。

支払いと入金のタイムラグを埋めるために消費者金融を上手く使っている人も多いんですよ。行政でも低利の特別融資をやっているけど直近3年の納税証明書を出せとか連帯保証人を付けろと面倒なんです。申込んでから融資してもらえるまで2週間ぐらい時間がかかりますしね。その点、消費者金融はスピード融資ですから」

グレーゾーン金利で年利30%という高利でも手続きが簡単だからという理由で飲食店、パン屋、洋品店、下請けの町工場などの経営者には、消費者金融は使い勝手が良いのだという。

「20万円を年利30%で借りると利息だけで6万円にもなる。だけど日割りしたら1日当たり164円です。1週間で1,148円、半月でも2,460円。役所に行って面倒な手続きをしたり、親類に連帯保証人を頼みたくないという人にはお手軽なんです」

日銭の入る商売をやっている顧客が相手ならば、まず取りっぱぐれはない。半月なり1ヵ月後には元金に利息を付けてきっちり返ってくる。世の中はきれい事だけでは渡っていけないと痛感させられたし、多少なりとも人を見る眼は養えたと思う。

客が自殺しても借金は回収…消費者金融業は“完全なブラック”

企業としての健全性や待遇はどうだったかというと、完全なブラックだった。

「貸金業規制法で訪問できる時間は決められていますし、脅迫的な取り立てをしてはいけないことになっているのですが、そんなものは無視して早朝、夜間にも電話したり、場合によっては勤めている会社に偽名、架空の会社名で督促していました」

仮に顧客が借金を苦にして自殺したとしても、貸金業者は絶対に損をしないよう工作していた。

「生命保険で一括回収できるようにしてあったんです。契約時に団体生命保険に強制加入させるんです、保険料は会社持ちで。これで客が自殺したとしても保険金で回収できる。契約書にもちゃんと書いてありますが、物凄く小さい文字だし、客の方も契約書を隅から隅まで熟読して疑問を口にするような人はいませんでした」

賃金も一見はよく思えるが、実際はそうでもなかった。

「就職したのが98年なのですが、初任給はいきなり25万円でした。大手企業でも初任給は16~17万円という時代だったから凄い高給だと錯覚しましたね」

ところが残業代はまったくなし。他の企業なら支給されることもある住宅手当、扶養家族手当などもなし。退職金が支払われるのは満3年以上勤務した者のみということだった。

「早出、残業が毎月60時間前後ありましたから今で言う固定残業代込みの給料でしたね」

本部の管理職クラスなら年収600万円ぐらいになったが、店舗勤務の場合は店長に昇格しても年収500万円がいいところだった。

「店長に出世したら年収が一気に70万円ぐらい上がりますが、業績が振るわなかったら即降格で給料も下げられます。飴と鞭を上手く使っていたと思いますね」

対外的な印象も良くはない。消費者金融(=サラ金)と言うと、やはり世間からは眉をひそめられたり下に見られたりする。

「だから金融関係としか言いませんでした。ノンバンク、リース業ですという感じで。実は就職するときも両親にはいい顔をされませんでしたし、同僚には結婚相手の親から、そういう仕事の人はちょっとといい顔されなかったので転職したというのもいましたから」