新卒でドラッグストアに就職し、淡々と働いていた大辻さん(仮名・29歳)は、夜中点けたテレビに映るアイドルをみて、人生が変わりました……。ルポライターである増田明利氏の著書『今日、借金を背負った 借金で人生が狂った11人の物語』(彩図社)より、人生の一部を“推し活”にささげた“とある男性”の末路を紹介します。
「自分が助けてあげなくては」と思っちゃうんです…“推し活”に人生をささげた月収26万円・29歳サラリーマンの末路【推し活ビジネスの実態】
残ったのは「借金」だけ…“熱が冷めた”大辻さんの現在
「借金も相当な金額になっていました」
大辻さんが作った借金は銀行カードローンが2つで150万円、クレジットカードのキャッシングが3つで60万円、リボ払いの残りが40万円弱。合計するとほぼ250万円。貯金もあらかた失っていた。
「今も250万円の借金を背負っているわけではありません。借りても夏冬のボーナスをほとんど返済に充てていたし、キャッシングしたのも少額だけどきちんと返してたので」
借りたお金を合計すると250万円近くになるが、アイドル応援を止めた2018年7月時点で抱えていた借金は約100万円。
「その後の半年で40万円ぐらい返済したから、今も残っているのは60万円ぐらいです。利息が付くからまだ70万円近くを返さなきゃなりません。返せない額じゃないからきちんと返しますけどね」
今でもアイドル好きは変わらないが、パソコンの動画でMVを観るぐらい。それも同じグループを5、6回観たらもういいという程度だ。バラエティー番組で昔はそこそこ売れていたけど消えかかっているアイドルが、まだやれます、もうひと花咲かせたいと身体を張った企画で半ベソをかいている姿を観ると「痛いなあ」「そろそろ30歳でしょ、もう落ち着きなさいよ」と思うこともある。
「アイドルっていうのはレコード会社や音楽プロデューサー、イベント会社などがマーケティングして作った商品なんでしょ。彼女たちも操り人形というか、お金儲けの道具なんだと思う」
それに夢中になり、多額のお金を吸い取られたわけだから、うまいことされてしまったと思う。
「趣味への金の使い過ぎにはくれぐれも気を付けた方がいい。お金を借りる安易さを覚えたら本当にヤバイよ。自分はヤミ金にまで手を出すはめにはならず、新聞やテレビで報道されるような目に遭わなかったのは幸い。そう思うようにしているんです」
とはいえ、まだ60万円も返し続けるのは辛いものがある。借金なんてしなかったらもっと有効なお金の使い道があったはず。
「自分の馬鹿!」と反省する。
増田 明利
ルポライター