合格には適度な緊張が必要
入試当日は誰でも緊張します。特に現役生は緊張の度合いが強いようで、緊張してはいけないと思うと、なおさら緊張するようです。しかし、適度な緊張は必要です。
自律神経には、交感神経と副交感神経があり、交感神経は活動しているとき、副交感神経はリラックスしているときに優位になりますから、副交感神経をきちんとはたらかせることができれば、緊張しない方法として活用できます。一方、交感神経が優位になると、アドレナリンやノルアドレナリンが分泌されて興奮状態になるので、思った以上の力を発揮できるかもしれません。集中力や判断力も高まります。ですから、入試に臨むときは、適度な緊張を保ちながらもリラックスしている状態がベストと言えます。
こうした理由から適度な緊張は良いことですが、過度な緊張は強い不安感につながり、入試では良い結果につながらないので、できれば避けたいものです。過度に緊張しないためには、「どうせ緊張するのだから、緊張を楽しもう」と考えましょう。「緊張しているほうが、むしろ良い結果が出るはずだ」、「緊張しているときは集中力が増すはずだ」といった具合に、緊張を前向きに捉えるぐらいが良いでしょう。
自信を持って入試に臨むためには、自宅での環境も重要です。
受験生は入試が近づくと神経が過敏になりがちで、保護者の言動が非常に強く影響するものです。保護者が心配して「今日はできたの?」と聞いてきたとしても、「大丈夫だよ」と、さらっと受け流すことも必要です。たとえ手応えがあまり良くなくても、「なんとかできたよ」と言えば安心しますから、あなたの気持ちも落ち着くはずです。
平常心を取り戻すための対策
「心身をリラックスさせる方法」を練習しておく
どうしても、入試当日に緊張しすぎてしまうのではないかと不安に思っている方には、自分に合った深呼吸法を身につけておくことをお勧めします。過度に緊張しているときは、交感神経が優位になっているため、呼吸が浅く速くなっています。ですから、ゆっくりと深い呼吸を繰り返すことで、心の状態を整えることができるのです。
緊張を和らげるための意識的な深呼吸は、入試当日にいきなりやろうと思ってもうまくいきません。入試の1ヵ月前から、自分に合った深呼吸の方法を試してみてください。そうして、毎日、学校に行く前にメンタルを整えたり、問題演習に取り組む前に心を落ち着けたりする練習をしましょう。
気持ちを落ち着かせる深呼吸法の例として、息を長く吐くことを意識することが良いようです。
《息を長く吐くことを意識した深呼吸法》
①口から息を細く長く吐いていく(頭の中で「1,2,3,4,5,6,…」とカウントしながらゆっくり吐く)
②10~15秒くらいで息を吐き切る
③息を吐き切ったら、鼻からゆっくり息を吸い込む
④ ①~③を3回繰り返す
平常心を取り戻す方法が毎日の習慣になっていれば、入試当日も「いつも通り、大丈夫!」と思えるはずです。
「他の受験生に気圧される必要はない」と心得る
試験会場に入ると、自分以外はみんな頭が良さそうに見えるものですが、そんなことを気にする必要はまったくありません。また、相手を蹴落として自分が有利になろうと、さまざまなプレッシャーをかけてくる受験生もいますが、これもスルーしましょう。
医学部の試験会場には多浪生も多く、中には「俺は余裕があるんだぞ!」と、これ見よがしな態度を取る受験生や、他の人を不安にさせるような言動をする受験生もいるようですが、プレッシャーをかけてくる人は、実は本人がプレッシャーを強く感じているわけですから、まともに受ける必要はありません。
試験会場の雰囲気に呑まれないためには、早めに会場に行き、控え室や試験室内に居場所を見つけるなど、自分が安心できる空間を先につくることです。落ち着いて参考書などを広げていれば、あとから来た人にプレッシャーをかけられることもなく、精神的に安定していられます。
事前に試験会場を下見しておく
試験会場に早く入るためにも、事前に下見をしておきましょう。
受験シーズンになると、あちこちの大学が入試を行っていますから、「最寄り駅が同じだったため、他の大学に行く受験生の列について行って、試験会場を間違えた」というような場合もあります。試験会場を間違えないまでも、不慣れな都市では交通手段や移動時間が不案内で、集合時間に遅れそうになったり、間に合わなくなったりすることもあります。こんなことになっては焦りも出て、とても平常心で試験に臨むことなどできません。必ず下見をして早めに試験会場に入ることを心がけましょう。
試験前日までの過ごし方
試験日の1ヵ月ぐらい前になったら夜型から朝型に変え、早寝早起きの習慣を身につけます。体内時計は1週間から2週間あれば調整できますが、やはり心がまえがありますから、1ヵ月ぐらい前から入試本番に合わせた生活リズムに変えていきましょう。朝型の生活リズムに変えることで、朝から集中しやすくなり、午前中の勉強がはかどりやすくなります。
前日にはしっかりと睡眠を取るようにしたいものですが、試験が気になってなかなか寝つけないこともあるでしょう。寝なければ困るなどと心配すればするほど寝つきが悪くなりますが、寝つけないのは他の受験生も同じです。ベッドに入って目を閉じて横になっていれば、眠れなくても脳と体は休まります。
「試験中に行き詰まったときの対応」を考えておく
実際の入試で問題を解いていて、行き詰まったときに、焦らずにどう対応するかはとても難しいことです。そんな時のために、例えば、数学の大問を途中まで解いて、そのあとの解法が思い浮かばなかったときに、まだ粘って考えるか、それともあきらめて次の問題に行くのか、切り替えのタイミングをあらかじめ決めておきます。また、与えられた条件を見落としていたということもあるので、もう一度問題文を読み直すといった、本番を意識した練習を積むことも大事です。
試験中、問題が難しく感じると不安になると思いますが、他の受験生も難しく感じているのです。また、実際に問題が難化した場合、上位層の人数が減るため、最後まで粘ればチャンスが広がります。「難しい」と感じたら「チャンスかも!」と前向きにとらえて、粘り強く頑張りましょう。
試験会場に行くときに持ち歩く参考書や問題集は、あれもこれもと考えがちですが、あまりに多いと荷物になってしまいますから、自分の苦手な問題だけを集めたノートなど、これと決めたものを1冊持って行くのが良いでしょう。お守りではないですが、試験会場でちょっと見返して、安心できるようなノートなり参考書を持って行くことをお勧めします。
また、模試でもそうですが、解答用紙に名前や受験番号を書き忘れることが意外とあります。ですから、名前と受験番号と受験科目名は3回チェックする習慣をつけておきましょう。
可児 良友
医系専門予備校メディカルラボ 本部教務統括

