「お口ポカン」の子が多い理由

当院のスタッフから友人の子どもの誕生日に録った動画を観せてもらったことがあります。

4歳の子どもが誕生日ケーキのロウソクを口で吹いて消そうとするのですが、火は一向に消えないどころか揺らぎもしないのです。

それでも子どもは一生懸命に吹き続け、周囲の大人は笑って見ています。しかし、筆者はこの動画を観て愕然としました。子どもの口腔機能が悪いのもその理由ですが、それ以上に見ている大人が子どもの口腔機能の発達不全にまったく気がついていないからです。

口腔機能のなかで口周りの筋肉(口輪筋)が弱くなると、口を窄めることができなくなり、息が漏れる様になります。子どもの口腔機能は口周りの筋肉に発達不全が顕著に出る傾向があり、口腔機能検査では唇の力の測定が重要です。

口周りの筋肉が弱いと、日常的に口が半開きになります。幼稚園児や学童期の子どもたちの口元を注意して見ていると、いわゆる「お口ポカン」状態になっている子どもが多くいることに気づきます。お口ポカン状態では、先述したように顎の成長や歯並びに悪影響を与えますが、それ以外にも口臭やイビキ、寝言の原因にもなります。

舌の位置・形も悪くなります。通常、舌は上顎に付いた状態です。唾をゴクンと飲み込んだときの舌の位置が正常といわれています。しかしお口ポカンでは、舌は下の歯のなかに収まった状態です。その結果、通常、丸い形の舌が歯型の跡でガタガタした形になります。

口呼吸の弊害

またお口ポカンの子どもは鼻ではなくお口で呼吸をするのですが、口呼吸はさまざまな弊害をもたらします。鼻で呼吸をするより口呼吸の場合は、酸素の吸入量が約10%低下します。

すると脳への酸素供給量が不足し、集中力の低下や眠気を引き起こします。口呼吸は口のなかを乾燥させるので、唾液の免疫力が弱まることから、インフルエンザや風邪などの感染症に罹りやすくなります。