歯が減ったことによる健康な歯への影響

50代、そして60代になると、歯周病の悪化などによって歯が抜け始めます。自分では支障がないと感じていても、歯が1本でも少ない状態でいることは、歯の3つの機能「咀嚼」「発音」「見た目」に影響をおよぼします。

特に影響が大きいのが咀嚼です。歯が減る前と変わらない力で食べ続けていると、支える側の歯へのダメージが大きくなり、歯茎が弱ってしまう可能性があります。特に奥歯は横揺れに弱く、隣の歯がなくなったことによるダメージは大きなものです。

また、歯には「自浄作用」があります。歯ブラシで磨かなくても、咀嚼や唾液、舌の力によって歯の表面や歯間に付着した食べカスやプラーク(歯垢)をある程度、洗い流してくれるのです。しかし、歯が抜けたことによって歯並びがガタガタに変わってしまうと、自浄作用も低下して虫歯や歯周病のリスクも高くなります。

歯はずっと「動き続けている」

そして、歯は生涯にわたって「動き続けている」ことをご存じでしょうか。歯が抜けた状態でいると、まわりの健康な歯は、なくなった歯のボリュームや噛み合わせをフォローしようとします。たとえば隣の歯が抜けた歯のほうに倒れてきたり、その歯と噛み合っていた歯が伸びてきたりすることもあるのです。

このように歯が抜けた状態を放置することは、残っていた健康な歯にもダメージを引き起こし、さらなる欠損を招きかねません。噛み合わせの異常によって、口が開けにくくなる開口異常や関節雑音といった諸症状につながる可能性もあり、それが頭痛などを引き起こすこともあります。

歯周病や虫歯、口臭のリスクが高まる理由

歯がなくなったとき、多くの方が選択するのが、保険診療も可能な「部分入れ歯」をつくることでしょう。ただし、入れ歯というのは歯の機能を回復させるものではなく、あくまでも失った歯を補うためのものです。1本の歯が部分入れ歯になったことによって、お口の環境が変化し、残った歯、さらには健康にも影響がおよぶ可能性があることを知ってください。

そもそも50代、60代になると歯茎が下がり、歯ブラシで手入れしなければいけない面積が増えます。つまり若いときより念入りに手入れしなければいけないわけです。そこに部分入れ歯をつけることで、汚れが溜まりやすくなり、隙間にも入りやすくなります。歯並びに問題がなかったときに働いていた自浄作用も低下しているわけですから、歯周病や虫歯のリスクはいっそう高まるだけでなく、口臭の原因にもなります。つまり、それまで以上にふだんのお手入れが重要になるのです。