団塊世代が全員75歳以上の後期高齢者となり、日本は「超高齢化社会」に突入しました。高齢化が進むと要介護者が増え、必然的に介護をする人も増えていきます。場合によっては「介護離職」という選択をする人も出てくるでしょう。そこで、今回は突然父の介護をしなければならなくなった村田敏也さん(仮名)の事例と共に、介護離職する前に活用すべき「介護支援制度」についてCFPの伊藤寛子氏が解説します。

(※写真はイメージです/PIXTA)
年金19万円で暮らす79歳父を襲った突然の病。献身的に介護を続けた52歳・1人息子だったが、重すぎる負担に吐血…親子共倒れを決定づけた「致命的な判断ミス」【CFPの助言】
仕事中心の生活を送っていたが、母親からの電話で事態が一変
会社員の村田敏也さん(仮名・52歳)は独身で、実家から片道2時間程離れた東京で1人暮らしをしています。システムエンジニアとして働いており、プロジェクトによって激務や長時間労働が続くことがたびたびある、仕事中心の生活を送っています。
仕事のストレスから同僚との飲食や趣味などにお金を使うことも多くありましたが、貯蓄は2,000万円まで貯まりました。定年退職まで頑張れば、あとは1人で悠々自適に暮らせるかな、と頭をよぎるような年齢に差し掛かっていました。
実家には年金暮らしの79歳になる父と、76歳の母がいます。2人でいるから大丈夫だろう、と特に心配をすることもなく、実家とあまりやりとりをすることがなかった村田さんでしたが、あるとき母親からかかってきた電話で事態が一変したのです。
父親が脳卒中で倒れ、病院に運ばれた、との連絡で村田さんは実家の近くの病院へ駆けつけました。父親は一命を取り留めましたが、手足に麻痺が生じたことで、話したり書いたりする機能が低下し、歩行や日常生活動作も制限される状態になりました。日常生活を送るためには介護が必要です。
退院後は村田さんの母親が父親を介護していましたが、高齢とはいえ男性の体を介助するには村田さんの母親だけでは厳しく、一人息子である村田さんは、休日や必要に応じて仕事を休んで実家に通い、介護を手伝っていました。
父親はリハビリを受けましたが、高齢のせいもあり筋力や回復力が低く、なかなか効果が現れません。リハビリへのモチベーションが上がらず、回復の兆しがないまま介護生活が長引いていきました。