他人事ではない介護離職問題

厚生労働省の雇用動向調査によると、2023年に離職した人は約798.1万人です。そのうち、「介護・看護」を理由に離職した人は0.9%、約7.2万人います。10人に1人は介護を理由に退職している、という数字は決して少なくない数でしょう。「介護・看護」を理由に退職した人のなかでは、男性よりも女性のほうが割合が多く、男女ともに50歳代が最も多くなっています。

2025年には、日本の人口構成のなかで最も大きなボリュームゾーンを占めている団塊の世代(1947年~1949年ごろの第1次ベビーブームに生まれた世代)のすべてが75歳以上の後期高齢者となります。日本社会は国民の5人に1人が後期高齢者という「超高齢化社会」を迎えることで、「2025年問題」といわれています。

要介護者となる人が増加するに伴い、介護をする側の人数も増えていきます。50歳代は会社で管理職として活躍している方も多い年代です。仕事をしながら高齢の家族を介護する人が増えていくことが予測されており、どうやって仕事と介護を両立させていくかは個人だけでなく、社会全体の問題でもあります。

経済的基盤を守るための仕事と介護の両立支援制度

国としても、仕事と介護の両立支援に力を入れており、両立のための制度も拡充されています。当事者となった際には、どのような制度があるか把握して、活用することが欠かせません。仕事を辞めることなく、働きながら介護をするための両立支援制度について解説します。

介護休業

要介護状態にある対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として分割して休業を取得することができます。有期契約労働者でも要件を満たせば取得可能です。

介護休暇

通院の付き添い、介護サービスに必要な手続きなどを行うために、年5日(対象家族が2人以上の場合は年10日)まで1日または時間単位で取得することができます。

介護休業給付金

雇用保険の被保険者が、要介護状態にある家族を介護するために介護休業を取得した場合、一定要件(介護休業期間中の各1ヵ月毎に休業開始前の1ヵ月当たりの賃金の8割以上の賃金が支払われていない、就業している日数が1ヵ月ごとに10日以下であるなど)を満たせば、介護休業期間中に休業開始時賃金月額の67%の介護休業給付金が支給されます。

終わりが見えない介護は、経済的な負担もかかり続けます。また、介護が終わったあとの、自身の老後や生活のためにも利用できる制度を活用し、可能な範囲で仕事を続けながら介護を続けることで、経済的基盤を守りましょう。