やむを得ず退職を決断、介護に専念するも重なる負担

当初は仕事をしながら実家へ通い、介護をしていた村田さんでしたが、介護をしていることは、上司や同僚にも理解が得られないだろうと思い、打ち明けることはありませんでした。

なんとか両立しようと頑張ってきた村田さんでしたが、仕事を休まざるを得ない日が増え、疲れて仕事に集中できずミスをしてしまう、ということが続いたことで限界を感じ、仕事を辞めて父親の介護に専念することにしました。

両親の年金は月あたり19万円程度です。この少ない年金だけでは、介護にかかる費用と生活費を賄うことはできません。そのため、村田さんが貯めてきた貯蓄も切り崩しながらの介護生活になりました。

2,000万円もあるなら大丈夫だろう……。そう感じるかもしれませんが、実際には驚くほどのスピードでお金は減っていきました。

築40年の古い自宅を介護しやすいようリフォームするのに数百万円。車椅子を使うこともある父親のために、大型の車を購入しました。さらに介護用品を揃え、自分の生活費も捻出しなくてはなりません。

村田さんは東京で分譲マンションを購入して住んでいたため、介護のために実家に戻ってきてからもローンの支払いを続けていました。もし介護が終われば東京に帰るという選択もできるよう、すぐに売る判断はできなかったのです。

この生活がいつまで続くのかという不安と、仕事を辞めてしまったことによる自身の老後に対する不安は、どんどん強まっていきました。実家の近くでの再就職も試みましたが、介護による制限があることもあり、なかなか仕事は決まりません。

父親は思うように動けないことへのストレスや、社会的な孤立感から、すぐに機嫌が悪くなり、村田さんや母親に反抗的な態度を取ったり、暴言を吐いたりすることが増えていきました。

精神的にも追い詰められていた影響か、あるとき村田さんは吐血してしまったのです。驚いて病院へ行くと、ストレスによる胃炎を起こしていました。

一人息子である自分が両親を支えるしかない、との責任感で献身的に介護をしていた村田さんでしたが、金銭的・体力的・精神的にも消耗しきっていました。