多くの人にとって、老後の収入の柱となるのが年金です。ただ、夫婦での合計受給額をベースに老後のマネープランを立てていると、配偶者の一方が先に亡くなった際、遺された側は危機に陥ることも。FPの辻本剛士氏が、具体的な事例をもとに解説します。
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遺族年金に満足している人っているんですか?…年金月17万円・83歳夫を亡くした75歳・元看護師の妻〈まさかの遺族年金額〉に恨み節「これじゃあ悲しみは消えません」【FPの助言】
年金月23万円でのんびり老後生活を送る森本夫妻
森本淳さん(仮名・83歳)と妻の洋子さん(仮名・75歳)は、家賃9万円の賃貸住宅に暮らしていました。現役時代、淳さんは印刷会社の営業職として働き、定年時には800万円の退職金を受け取りました。定年を迎えてからも70歳まで再雇用を受け、第一線で活躍していたといいます。
一方の洋子さんは、もともと看護師として働いていましたが、結婚を機に専業主婦となり、それからは家庭を支えることに専念していました。
家計管理を担当していた洋子さんは、毎月余った生活費は貯金に回しており、500万円ほど貯蓄があります。そのため、夫婦の資産額は退職金と貯蓄をあわせて約1,300万円です。
また、2人は65歳以降、合計23万円の年金収入がありました。その内訳は、淳さんが月額17万円(老齢厚生年金11万円+老齢基礎年金6万円)洋子さんが6万円(老齢基礎年金のみ)です。
夫婦は近所を散歩したり、半年に1回程度旅行に出かけたりと、穏やかな老後を満喫していました。
支出額は現役時代とあまり変わらず毎月25万円ほどあるため、老後は毎月2~3万円程度の赤字となっていますが、これまで築き上げた資産が支えとなり、淳さんは楽観的です。
しかし、そんな平穏な日常は、ある日突然終わりを迎えることとなりました。
どうしてこんなことに…夫婦を襲った「突然の悲劇」
その日、淳さんはいつものように、夕食後にお風呂に入りました。妻の洋子さんもテレビを観ながらのんびりと過ごしていましたが、1時間経っても淳さんがお風呂から出てこないことに気づきました。
「遅いわね……どうしたのかしら?」
洋子さんが様子を見に行くと、夫がお風呂場で倒れています。
洋子さんは急いで救急車を呼び、淳さんはすぐに病院に搬送されました。
しかし、懸命な処置も虚しく、淳さんは帰らぬ人となりました。死因は「ヒートショック」。寒暖差による血圧の急変動が引き起こしたものだと、医師から説明を受けました。
「どうしてこんなことに……なんでうちの人が」
洋子さんは、愛する夫との突然の別れに、思わず泣き崩れてしまいました。