多くの人にとって、老後の収入の柱となるのが年金です。ただ、夫婦での合計受給額をベースに老後のマネープランを立てていると、配偶者の一方が先に亡くなった際、遺された側は危機に陥ることも。FPの辻本剛士氏が、具体的な事例をもとに解説します。
遺族年金に満足している人っているんですか?…年金月17万円・83歳夫を亡くした75歳・元看護師の妻〈まさかの遺族年金額〉に恨み節「これじゃあ悲しみは消えません」【FPの助言】
多くの人が勘違いしている「遺族年金」の注意点
遺族年金は主に、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」で構成されています。
遺族基礎年金
「遺族基礎年金」は、国民年金または厚生年金保険の被保険者が亡くなった場合などに、亡くなられた人によって生計を維持されていた遺族が受け取れる年金です。下記に当てはまる場合にのみ、遺族年金を受給することができます。
・子どものいる配偶者
・18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子ども、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子ども
したがって、洋子さんのように子どものいない配偶者には支給されません。
なお、遺族基礎年金の受給額は2025年1月時点で一律81万6,000円となっており、子どもの人数によって下記のように加算されていきます。
・基本額:81万6,000円
・子ども1人目:23万4,800円
・子ども2人目:23万4,800円
・子ども3人目以降:各7万8,300円
遺族厚生年金
遺族厚生年金は、会社員や公務員などの被保険者が亡くなった際に遺族が受け取れる年金です。遺族基礎年金とは異なり、子のいない遺族にも年金が支給される仕組みとなっています。ただし、子のいない30歳未満の妻は5年間のみの有期年金になってしまいます。
遺族厚生年金の支給額は2003年3月31日以前とそれ以降の加入で計算式が異なりますが、今回は2003年4月1日以降の計算式でみていきます。
【遺族厚生年金の計算式】
(1)加入月数が300ヵ月未満の場合
平均標準報酬額×5.481/1,000×300×3/4
(2)加入月数が300ヵ月以上の場合
平均標準報酬額×5.481/1,000×加入月数×3/4
遺族年金について、今回のように「4分の3」という数字だけを理解し、数字が独り歩きしてしまっていることがよくあります。そのため、実際に受け取る金額が想定よりも大幅に少なくなるケースもみられます。
そのため、あらかじめ配偶者が亡くなったあとの年金額が減少することを十分に理解し、生活が困難にならないよう、事前に必要な資産を確保しておくことや、日常的に家計を見直しておくことが大切です。