窓口で提示された「遺族年金額」に絶句

どうにか葬儀を終えた洋子さんは、夫を失った喪失感に苛まれながらも、これからの生活について考えるようになりました。というのも、淳さんが亡くなったことで収入が大きく減ってしまうという心配があったからです。

洋子さんが自分なりに調べてみたところ、配偶者が亡くなると遺族年金を受給できるとのこと。受給額は配偶者の年金額の4分の3とあります。淳さんの年金が17万円でしたから、遺族年金額は約12万7,500円です。つまり、洋子さんの老齢基礎年金6万円と合わせて、合計18万7,500円ほど受け取れる計算になります。

夫婦は18年ものあいだ生活費のために毎月2~3万円取り崩していることから、資産はすでに600万円ほどに目減りしています。

「これまでの年金収入でも赤字だったのに、これから約19万円で生活なんてできるのかしら……」

担当者が告げた残酷な事実

不安に駆られた洋子さんは年金事務所を訪れ、遺族年金について詳しく確認することにしました。担当者に淳さんの年金額やこれまでの記録を伝え、今後の受給額を確認してもらいます。

しかし、そこで提示された金額は、洋子さんの予想を大きく下回るものでした。

担当者が言うには、洋子さんが受給できる遺族年金額は8万2,500円とのこと。自身の老齢基礎年金6万円を合わせても、合計で月額14万2,500円にしかなりません。

説明を聞いた洋子さんは、一瞬耳を疑いました。

「えっ、8万円ですか? ちょっと待ってください、なにかの間違いでは?」

想定していた12万7,500円よりも約5万円も低い金額に、洋子さんは驚きを隠せません。

「夫が生きていたとき、年金額は17万円だったはずです。半分も減るなんておかしいわ」

洋子さんが焦ってそう伝えると、担当者は落ち着いた声で説明を続けました。

「まず淳様の年金額ですが、老齢基礎年金が6万円、老齢厚生年金が11万円でした。このうち、遺族基礎年金は18歳未満のお子様がいる場合に限り支給されるため、洋子様の場合は該当しません

次に、遺族厚生年金については、老齢厚生年金の11万円の4分の3が支給されます。そのため、8万2,500円となります」

担当者が話し終えると、窓口はしばらく沈黙の空気に包まれました。やがて、洋子さんは目に涙を浮かべ、絞り出すように言いました。

「私……自分の年金とあわせて、たった14万円でこれから生活しなければいけないということですか?」

担当者が返事に困っていると、洋子さんは続けます。

「こんなの理不尽だわ。遺族年金に満足している人なんているのかしら? 夫を亡くして独りになって、年金も減ってしまうだなんて……。これじゃあ、遺されたほうが辛いだけよ!」