多くの人にとって、老後の収入の柱となるのが年金です。ただ、夫婦での合計受給額をベースに老後のマネープランを立てていると、配偶者の一方が先に亡くなった際、遺された側は危機に陥ることも。FPの辻本剛士氏が、具体的な事例をもとに解説します。
遺族年金に満足している人っているんですか?…年金月17万円・83歳夫を亡くした75歳・元看護師の妻〈まさかの遺族年金額〉に恨み節「これじゃあ悲しみは消えません」【FPの助言】
家計改善のために…洋子さんが踏み出した“新たな一歩”
夫の淳さんを亡くし、それまでの月23万円から月14万円ほどの収入で生活することになった洋子さん。夫がいたころに比べ支出も減少したものの、収入額にあわせて生活水準を急激に落とすことは難しく、毎月6万円の赤字が続いています。
「このままでは貯金がゼロになってしまう……」
貯蓄の目減りが恐怖となり、夜も眠れなくなった洋子さんは、知り合いから紹介されたファイナンシャルプランナー(FP)に相談することにしました。
洋子さんから話を聞いたFPはまず、現在の家計をすべて洗い出すことにしました。
洋子さんは現在、収入が14万円程度の一方、支出は毎月20万円近くあります。FPは支出の内訳を丁寧に分析したうえで、家計改善のために下記のように提案を行いました。
「まずは固定費の見直しを進めましょう。スマホ代やネット代、固定電話など、月々の通信費を中心に見直すことで、少なくとも1万円以上の節約が期待できます。特に固定電話はほとんど使っていないとのことですから、思い切って解約してみてはいかがでしょうか。
また、住居費についても見直す必要がありそうです。現在、洋子さんは家賃9万円の賃貸物件に住んでいらっしゃいますが、現在の収入に対して住居費の占める割合が高すぎるように思います。
この点、UR賃貸や住宅セーフティネット制度を活用すれば家賃を5~6万円程度に抑えることが可能です。これにより、毎月3~4万円のコスト削減が期待できます」
「夫と長年住んだいまの住まいには思い入れがあるから引っ越す踏ん切りがつけられずにいたんだけど、いまが潮時かもしれないわね……」
洋子さんはFPの助言を受け、現実を受け入れる決意を固め始めたようでした。
その後、数回の面談で具体的な収支の計画を立てた洋子さんは、これからの人生に前向きになったようです。
「これならなんとか1人でもやっていけるかもしれない」
愛する夫の死を乗り越え、洋子さんは第2の人生を歩み始めました。
辻本 剛士
ファイナンシャルプランナー
