(※写真はイメージです/PIXTA)
「しっかり働けば老後は年金がもらえて安泰」と信じていた
川口陽子さん(仮名・75歳)。毎朝7時から9時まで、オフィスビルの清掃のアルバイトをしています。時給は1,380円。1ヵ月で6万円強ほどになります。このような仕事を始めて10年ほどが経ちます。
――コロナのときは出社する人がほとんどいなくなったので稼働が半分以下になって、お給料が大幅に下がっちゃったけど。一人で気楽にできる仕事だから、長く続いているのかしら
毎朝10時には帰宅。そこからはテレビを観たり、趣味のお裁縫をしたりと、思い思いに過ごし、夜8時には就寝するといいます。45年連れ添った夫は7年前に他界。現在は築40年の自宅でひとり暮らしをしています。
昨今の悩み事といえば物価高。
――お米なんて昨年の騒動以来、1,000円以上値上げになったままじゃない。少ない年金でどう生きていけというのよ
現在受け取っている年金は、まず自身の年金が月8万1,000円。「今まで頑張って働いてきたのに、たったこれだけ。騙された気分でいっぱいよ」とため息の川口さん。さらに亡くなった夫の遺族年金が月7万円ほど。これだけではとても生きていけず、働くしかないと肩を落とします。なぜなら、ほとんど貯金がないから。
――住宅ローンを返して、子どもの教育費を払って、親の介護費用も。そしたら全然お金が貯まらなかったの。この家も40年経ってボロボロで、直すとなるとかなりの額になるでしょ。少しでもいいから、貯金をしていかないと、万一のときに対応できないでしょ
貯金については「やりくりが下手だっただけ」と納得していますが、生活のベースになる年金に対しては愚痴が止まらなくなるといいます。
――頑張って働けば、老後は年金がもらえて安泰だと誰もが信じていたわ。それなのに、50年近く働いた亡くなった夫でも月14万円よ。私もたくさんパートで働いたけど、年金は全然増えないの。騙された気分よ
内閣府『国民生活に関する世論調査』で、「老後生活に対して不安感を覚えている人の割合」の推移をみていくと、1990年代までは2~3割程度。2010年代に半数を超え、最新の2024年調査では62.8%を記録しています。これと比例するように、年金への関心は高まったといえます。つまり40年ほど前は年金への関心は低く、その仕組みを理解する人はかなりの少数派。
【老後生活に対して不安感を覚えている人の割合】
1981年…20.3%
1985年…27.4%
1990年…32.8%
1995年…37.1%
2001年…47.1%
2005年…48.3%
2010年…52.4%
2015年…55.7%
2021年…58.5%
2022年…63.5%
2023年…63.6%
2024年…62.8%
※出所:内閣府『国民生活に関する世論調査』より
今であれば、どんなに働こうと厚生年金に加入しなければ年金は増えない(=厚生年金は増えない)と多くの人が知っていますが、以前はこのような基礎的なことさえ知らない人は珍しくなかったのです。