借金返済のためマグロ漁船に乗ることになった筆者を待ち受けていたのは、「二度と乗るものか」と思うほど危険で過酷な労働環境でした。怪我もしましたが、なんとかはじめての航海を終えます。そんななか、ヤンキーの先輩からの誘いを受け、再び海に出ることに……。菊地誠壱氏の著書『借金を返すためにマグロ漁船に乗っていました』(彩図社)より、詳しくみていきましょう。
マグロ漁船なんて乗るんじゃなかった…親の借金「5,000万円」返済に挑む17歳の“ヤンチャ少年”が手にした「衝撃の給与額」【実話】
「絶対に乗りたくなかった」マグロ漁船に再び乗船したワケ
ヤンキーの先輩の英雄さんという人がいます。
英雄さんと出会ったのは高校1年のときで、駅でダチと2人でいたときに声をかけられました。ゴリラというバイクに2人乗りでやって来て、やたら怖いのが来たなと当時は思いました。リーゼントパーマをあてていて、色黒で身体がデカくて見た目も怖いのですが、喧嘩が強くて豪快な人だったので地元では有名人でした。
英雄さんと会ったとき、その相方の人に脅されました。
「お~、おめーらこんな時間にこの辺にいると怖い目に遭うぞ!」
この人は高明さんというのですが、組長というあだ名で呼ばれて恐れられていました。パンチパーマに剃り込みを入れていて、上下スウェットで、体形は細身ですが人相の悪い感じでした。上半身裸になってサラシを巻いて単車を飛ばすという、なかなかにぶっ飛んだことをやる人でした。
英雄さんが私に質問してきました。
「お前ら、どこから来てるのよ?」
「白川です」
「本当か? 秀樹って知ってる?」
「え……いとこですけど」
「マジでか? ガハハハハ」
めちゃくちゃ笑って喜んでいました。私のいとこの秀樹ちゃんも地元では不良で相当有名だったので、繋がった! と私は驚きました。
この出会いが、まさか次のマグロ漁船の航海につながり、英雄さんと一緒に船に乗るくらい仲良くなるとは思いもしませんでした。
秀樹ちゃんのお兄さんの安広くんは私より2つ年上で、身長が高くて不良っぽい男前なお兄ちゃんです。女遊びの天才だったので他の高校の女にまで手を出していました。喧嘩は弱いですが優しいです。
英雄さんと駅で話してから数ヵ月後、私は長福丸から帰還し、家で休みながら次の仕事をどうするか悩んでいました。
ある日、安広くんと秀樹ちゃんの家へと遊びに行きました。
そこで偶然、英雄さんと再会しました。実は安広くんと英雄さんは友達で、2人は一緒にマグロ漁船に乗っていました。それから英雄さんと仲良くなり、3人で一緒に遊ぶようになったのですが、あるとき英雄さんから誘いを受けました。
「せー、俺らと船いこうや! 楽しいぞ」
英雄さんは満面の笑みでそう言いました。長福丸のときは二度とマグロ漁船に乗るものかと思っていましたが、英雄さんと安広くんがいればきっと楽しくやっていけるだろうと思い、快諾しました。