先輩に誘われ、二度目の航海へ

5,000万円という多額の借金を返済するため、高校中退後マグロ漁船員になった筆者。

最初の航海では苦労も多く、「二度と乗るものか」と思ったほどでした。

しかし、ヤンキーの先輩に誘われ再びマグロ漁船に乗ることに。

仲のいい先輩に教えてもらいながら、だんだんと仕事を覚えていきます。

安広くん※1、英雄さん※2、私の3人で仕込み屋へと向かい、また航海に必要なものをいろいろと買い揃えました。前の航海とは違ってマグロ漁船の先輩2人からのアドバイスがあったので、心強いし頼りになるなと思いました。それと同時に、初めてのときにあれほど嫌だったはずの航海が、少しずつ楽しみになっていきました。

※1筆者のいとこである秀樹の兄。筆者より2つ年上で、身長が高く不良らしい見た目。

※2リーゼントパーマをあてていて、色黒で身体が大きく、迫力のある外見。喧嘩が強く豪快で、筆者の地元では有名人。筆者を秋洋丸に誘った。安広とは友達で、2人は一緒にマグロ漁船に乗っていた。

「これも買っておいたほうがいいぞ!」

「はい!」

英雄さんは不良仲間の間ではレジェンドのような存在ですが、マグロ漁船でも冷凍長というポジションに就いています。言うなれば船の要となる幹部で、船員の人たちも一目置いている存在です。

「せー(※筆者のあだ名)、これも買っておけよ!」

「わかった!」

いとこの安広くんも仕事ができて頼れる兄貴分です。この仲の良い先輩2人がいるおかげで、以前のような恐れもなく安心して航海に臨めました。

そうして、2回目の航海が始まりました。冷凍長の英雄さんは船の中では中心的人物なので、連れの私に対しても船員の人たちはしっかり面倒を見てくれました。そのおかげで前の船とは違い、とても居心地がよかったです。他の船員の対応も悪くはなく、私の働きぶりを認めてくれている感じがして働きやすかったです。安広くんも仕事ができるので、英雄さんや安広くんといると本当に楽しかったです。

それから、この船にはもう1人、私と同じ1年生が乗っていました。