総務省の調査によると、65歳以上の高齢夫婦における1ヵ月の平均支出は25万円ほど。年金だけでは月に3万円ほど不足する計算です。年金だけでは暮らせない……そんな不安を前に、高齢になっても働いたり、年金が増額となる繰下げ受給を選択したりする人が増えています。ただ、こうして叶える「お金の不安のない老後」が、本当に幸せとは限らないようです。
年金が増えても幸せにはなれませんでした…「年金月30万円」72歳おひとり様男性、老後不安は消えても「年金の繰下げ」を悔やむワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

老後を考えると不安ばかり…定年後も働く高齢者のホンネ

相川浩さん(仮名・72歳)。年金生活をスタートさせて2年が経ちます。

 

――60歳で定年を迎えましたが、まだ住宅ローンの返済があり、貯蓄も十分ではなかったんです。妻とも話をして、定年以降も働くことにしました。老後のことを考えるといくらお金があっても不安がなくならなくて……結局、働いていた会社の上限ギリギリ、70歳まで働きました

 

65歳で仕事を辞めるか、それとも働き続けるかを考えたといいます。相川さんが選択したのは「働き続ける」。

 

――65歳の時点で貯蓄は2,500万円ほどあったかと思いますが、もっとお金がないとやっぱり老後が不安。妻は「そろそろゆっくりしたら」と少し呆れていましたけど

 

【働く目的は何か?】

■お金を得るため

全世代平均…64.5%、60代…62.2%、70代以上…39.7%

■社会の一員としての務めを果たすため

全世代平均…10.8%、60代…11.9%、70代以上…16.1%

■自分の才能や能力を発揮するため

全世代平均…7.2%、60代…7.4%、70代以上…8.5%

■生きがいを見つけるため

全世代平均…12.8%、60代…15.9%、70代以上…24.9%

出所:内閣府『国民生活に関する世論調査(令和5年11月調査)』

 

相川さんが働き続ける選択をした理由。「年金の繰下げ受給」の存在も大きかったといいます。老齢年金は原則65歳から受給。しかし希望すれば66~75歳の間で受給開始のタイミングを遅らせることができます(昭和27年4月1日以前生まれの場合、繰下げ上限年齢は70歳)。1ヵ月遅らせるごとに受給額は0.7%アップ。最大84%増やすことができます。

 

――年金の受取額が増えれば当然、老後も安心です。だから年金の受け取りも繰り下げることにしたんです

 

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