ギャンブルとは無縁で、堅実な性格だった高野さん。しかし、ふとしたきっかけで競馬に手を出し、ビギナーズラックで大儲け。気づいたら、取り返しのつかない借金地獄に陥ってしまいました……。ルポライターである増田明利氏の著書『今日、借金を背負った 借金で人生が狂った11人の物語』(彩図社)より、「借金地獄」に陥った男性の実例をみていきましょう。

アパートから追い出されました…月収32万円“質素で堅実”だった33歳・都内在住の男性が「借金地獄」に陥ったまさかの理由【ルポ】
「約300万円の借金を背負った人」の生活とは
2018年1月からはひたすら借金を返す生活。
「毎月、どこにいくら返すか。ちゃんと入金したか。返し忘れはないか。こういうことで忙殺されるのは辛いので○○銀行のおまとめローンというものに借り換えて、今はそこへ毎月返済しています」
借入れ期間が長くなればそれだけ利息が派生するのだから、できるだけ早く完済したい。
「何とか3年で完済するのが目標なので、毎月の返済額は12万円です」
このペースで返し続けても返済総額は420万円以上になるのだから頭が痛くなる。
「借金を作って失ったのは精神的な健康と社会的信用ですね。借金額が200万円を超えたときから、今日だけでこれだけの利息が付くのかと暗澹(あんたん)たる思いで過ごしていました」
返済のことを考えると食べ物も喉を通らなかったし眠れないこともあった。
「家賃滞納2ヵ月という事故を起こしているので、住んでいたアパートからも追い出されてしまいました」
2年の契約が終了する4ヵ月前に管理会社から更新は不可、契約満了日の2週間前までに完全退去しろという通告が来た。固定費を抑えるために家賃相場が安い23区最北端の足立区に転居した。
「何が何でも借金を返さないと。今はそれしか考えていない。だから生活はキツいです」
「奨学金返済のため」と偽って、土日はアルバイトで生活費を補填
給料の手取りは24万円前後。家賃と管理費で6万4,000円、水道光熱費と通信費が2万円。借金返済は12万円なので残るのは3万6,000円ほど。これで食費、医療費、被服費、保険などを賄うのは土台無理な話。だから土日にアルバイトをしているわけだ。
土日のアルバイトは生活費の補填が目的だが、競馬を断つためという意味もある。
「土日はラジオ日本とテレビ東京、フジテレビで競馬中継をやっているんです。もう競馬は懲り懲りだけど変な虫が湧かないとも限らない。土日も働いていれば触れなくて済むと思うので」
アルバイトは宅配寿司店のデリバリー。三輪スクーターであちこちに出前するのが仕事。時給は1,000円。勤務時間は正午から夕方5時までなので帰宅するのは5時半頃。この時間なら最終レースも終わっているので競馬のことは考えない。
「身体の方は今のところ大丈夫みたいです。金曜日は早寝してアルバイトに行く1時間前まで寝ています。日曜日も同じ。疲れるなんて暢気なこと言っていられないですから」
会社は特別な事情があり、業務に関係しないものであれば副業を認めているので奨学金返済のためと偽って許可をもらった。
「競馬で作った借金を返すためなんて言えないでしょ。上司は大変だなあと同情してくれていますよ」
アルバイトの収入は4週8回やって3万2,000円。祝日のある月は追加で働いているから4万円ということもある。この副収入があるから多額の借金返済をしながらも人並みに暮らせているわけだ。
「今は競馬とはまったく無縁です。絶対に首を突っ込まないようにしています」