通常、「無理なく返済できる住宅ローン」の目安は、返済比率(年間返済額÷年収×100)20~25%とされています。しかし「20%未満なら絶対に大丈夫か」というと、どうもそうとはいえないようです。ルポライターである増田明利氏著書『今日、借金を背負った 借金で人生が狂った11人の物語』(彩図社)より、住宅ローンを借りて“夢のマイホーム”を手に入れた男性の実例をみていきましょう。
もう、無理だ…月収45万円のサラリーマン〈1,600万円の住宅ローン〉で埼玉県・草加駅近くにマイホームを購入「すべてが順調」だったが…6年後に発覚した“まさかの事実”に悲鳴【実話】
もう、無理だ…金澤さんの心を折った“トドメの一撃”
もう家を持ち続けるのは無理だと思ったのは昨年末。マンションの管理組合から来年10月に大規模修繕を実施するという通知があった。外壁タイルの張り替え、玄関ホールの床タイル交換、敷地内通路のアスファルト工事などをやるので修繕積立金だけでは足りなくなる。ついては入居者1戸当たり12万円負担してもらうことになったと書面で連絡があったから頭を抱えてしまった。
「毎月の維持費だって大層な金額なのに、更に12万円払えと言われてもねえ」
このとき、マンションを買ったのは失敗だったと痛感した。
「管理費と修繕積立金の合計が2万7,000円だから20年払う(住む)と650万円。25年だったら810万円。年月が長くなったら建て替えという事態になる可能性もあるし」
戸建なら管理費は不要、駐輪代も取られない。小さな不具合ならホームセンターで部品や用具を買って自分で修繕することもできる。こういうことを考えなかったのは大きな失敗だった。
「妻に売却することを提案したら最初は難色を示しましてね。手放したらもう1度買うのは不可能、体調が戻ったらパート仕事を探すと言うんです。しかし、また身体をおかしくしたら元も子もないからね。無理をさせたくない」
家計の補填として取り崩している貯金は月2万5,000円から3万円。年間で30万円以上も減っていく。長男は間もなく卒業するが、入れ替わりに長女が進学するので4年間で300万円以上の学費が必要だ。
奨学金を受ける手もあるが、今の奨学金制度は学生ローンと同じ。給付型ならいいが貸与型だと卒業して半年後から返済を始めなければならない。アルバイトはしてもらわなければならないが、学費だけは何とか払ってやりたい。
「このままでいったら8年ぐらいで預貯金は底を突く。そうなる前に家計を見直したい。退職金でローンを返したら老後の生活資金が枯渇するでしょ。やはり、今一番の重荷である住宅ローンを清算するしかないと思いました」
渋っていた奥さんもテレビのドキュメント番組で、ローンを滞納し、銀行から一括返済と遅延損害金を請求されて途方に暮れている人や家を金融機関に差し押さえられて競売にかけられた人、売却してもローンを清算できず借金だけが残った人などを見て怖くなったようで、今のうちに売却してローンを清算することに同意してくれた。
「子どもたちにも現実を話したら仕方ないねと納得してくれた。申し訳なかったけど、売って借金から逃れるようにしたわけなんです」