中学時代から短ラン、ドカン、リーゼント。治安の悪い街で育った筆者は、高校に入っても悪さばかりし、幾度も停学処分をくらいます。そんな筆者は、ひょんなことから17歳にして「マグロ漁船」に乗ることに……。菊地誠壱氏の著書『借金を返すためにマグロ漁船に乗っていました』(彩図社)より、筆者の実体験をみていきましょう。
マグロ漁船に乗ってくれ…ハンバーガーを買いに行くだけで絡まれる〈治安最悪〉の街。家族想いな“喧嘩自慢の17歳”が「マグロ漁船員」となった理由【実話】
マグロ漁船乗ってくれ!…17歳にして「マグロ漁船員」に
この後の展開は早かったです。高校を中退してすぐ、オヤジが仕事を持ちかけてきました。
「マグロ漁船乗ってくれ!」オヤジはニコニコしながら言いました。高校は辞めたけれど立派に働き口も決まってよかったな! という気持ちでいてくれていたのだと思います。それに、借金を返すのにこんなに稼ぎのいい仕事は他にありませんから。
オヤジのお兄さんに、たかしおんちゃんという人がいます。頭は禿げ上がっていて、酒焼けで顔の黒くなったおじさんです。うちに来るといつも、アワビとかをつまみにリザーブか何かのウイスキーをロックで飲んでいます。なんでこの人に酒を出すのだろう? といつも不思議に思っていました。
「おう! 小遣いだ!」たかしおんちゃんは酒焼けした顔でそう言ってお小遣いをくれるので、私の中ではいい人でした。マグロ漁船の仕事が決まった日もうちにいて、5,000円もらいました。
というのも、マグロ漁船の仕事を持ってきたのはおんちゃんです。実はおんちゃんの職業は近海マグロ延縄(はえなわ)漁船の漁師でした。だからお金を持っているんだ! 私はやっと理解しました。
ただ、独り者のおんちゃんはスナックとかにお金を溶かしていて、たびたびうちのお袋からお金を借りるというどうしようもない一面もありました。「よし! マグロ漁船行くか!」おんちゃんはリザーブをロックで飲みながら、私にそう言いました。
マグロ漁船がどんなものかはあまり深く考えていませんでしたが、おんちゃんの言うとおりに仕込み屋に行き、漁船で働くにあたって必要なものを買いそろえることになりました。オヤジはお袋と一緒にわざわざ車で2時間かけて港まで来てくれました。
大きな港の近くには仕込み屋が並んでいて、仕込み金(道具代)としてもらった10万円でいろいろなものを買いました。
揚げ縄用のエプロン型カッパ、投縄用のズボン型カッパ、厚めの上着と薄めの上着を1着ずつ、ゴム手袋、軍手、インナー、厚手の靴下、大量のタバコ、大量のカップラーメン、大量のジュース、洗濯用洗剤、物干し……とにかく言われるがままに10万円分を購入しました。