一家の大黒柱として長年勤め上げたサラリーマン。「もちろん家族も感謝してくれているだろう」そう本人は思っていても、実は家族の評価はそうではなかった……といったことは少なくありません。今回は、そんな悲しいケースについて、中島さん夫妻(仮名)の事例と共にCFPの伊藤寛子氏が解説します。
家族のために身を粉にして働いてきたんだぞ…元食品スーパー勤務・年金月16万円の65歳男性、ようやく穏やかな老後生活を送れるはずが…ある日手渡された「一通の書類」で急転直下。悲しみの老後へ【CFPの助言】
多忙な現役時代を終えた後、穏やかな老後を送るはずだったが…
中島義夫さん(仮名・65歳)は、妻の奈美さん(仮名・61歳)と二人暮らし。子どもは独立しています。中島さんは定年退職を迎えるまで食品スーパーで店舗運営の仕事をしていました。
店長として現場を統括する立場になってからは、売上目標のプレッシャー、顧客クレーム対応、スタッフとの関係構築など、ストレスを多く抱えながらも、責任感を持って働いてきました。
店舗異動による転勤もあったことから、中島さんが家を購入したのは40代後半になってから。住宅ローンを借りる際は、借入可能額や住宅ローン控除のメリットなどを考慮して、共働きの奈美さんとペアローンを組んで、4,500万円のマンションを購入しました。
そんな中島さんは長年仕事中心の生活を送ってきたこともあり、65歳の定年を迎えたらそのままリタイアして奈美さんと穏やかに老後を過ごそう、と決めていました。
退職金を住宅ローンの一部返済に充てても貯蓄は2,000万円程残ります。ひと月約16万円受け取れる自分の年金と奈美さんの年金があれば、十分今の暮らしを続けていけるだろうと考えていました。
そして、実際に退職して年金生活に突入した中島さんは、今までがむしゃらに働いてきたことだし、しばらくは家でゆっくりしよう、と1日中家にいるようになったのでした。
一方で、4歳年下の奈美さんはまだ仕事を続けています。退職したことだし、家のことを少し手伝ってあげてもいいかなと思った中島さんですが、今まで一切家事をしてこなかったため、何をしたらいいのかさっぱりわかりません。
聞いてみればいいものの、プライドが邪魔をしてなかなか切り出せず、結局奈美さんに任せきりの生活のまま過ぎていきました。
しかし、そんな日々を過ごしていたある日、中島さんは突然、奈美さんから離婚届を突き付けられたのです。
「あなたとはもう一緒に暮らしていけません」