
「お姉ちゃんでしょ!」で心を傷つけられる人も
優しかった子が急に反抗的に
ある幼稚園の女の子に妹が生まれましたが、赤ちゃん返りもせず妹をかわいがっていました。ところがあるときから急に反抗的になり、幼稚園で先生の話を無視したりお友だちとケンカしたりするようになりました。
お母さんに尋ねると「そういえば、最近妹に少し意地悪をしたことがあり、『お姉ちゃんでしょ!』と叱ったことが何度かありました」と、答えました。
恐らくこの子は叱られて、「お母さんにきらわれた」と感じてしまったのでしょう。そこでお母さんには「とにかく『あなたのことが大好きよ』と言ってあげてください」とお願いしました。お母さんは家に帰ると娘さんに謝り、「お母さんはあなたのことが大好きよ」と抱きしめてあげたそうです。
娘さんはその後しばらく甘えていましたが、やがてもとの活発で優しい子に戻ったということです。
「大好きだよ」とフォローされない人も多い
子どもにとっていちばんの関心事は「母親にきらわれないこと」です。母親にきらわれることは子どもにとって生存の危機を意味します。母親にしてみればきょうだいを平等に愛することは当たり前でも、子どもはささいなきっかけで「親にきらわれている」と感じ、そこから親の手助けを拒絶する子に変わることもあるのです。
そこで親がフォローしなければ、親子間の距離は徐々に広がり、それが原因で愛着に問題が生じる人も珍しくありません。
村上伸治
精神科医