「愛着障害」とは正確には小児に限られた病名です。大人の場合、愛着障害とはいえないため、精神科医・村上伸治氏は広く「愛着の問題」と呼んでいます。現代社会の病「大人の愛着障害」とは? 本記事では、同氏監修の書籍『大人の愛着障害: 「安心感」と「自己肯定感」を育む方法』(大和出版)より一部を抜粋・再編集し、愛着に問題が生じる原因を解説します。
お姉ちゃんでしょ!…幼稚園で先生を無視、友だちとのケンカが増えた娘。やがてもとの活発で優しい子に戻った「母の対応」【医師が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「お姉ちゃんでしょ!」で心を傷つけられる人も

優しかった子が急に反抗的に

ある幼稚園の女の子に妹が生まれましたが、赤ちゃん返りもせず妹をかわいがっていました。ところがあるときから急に反抗的になり、幼稚園で先生の話を無視したりお友だちとケンカしたりするようになりました。

 

お母さんに尋ねると「そういえば、最近妹に少し意地悪をしたことがあり、『お姉ちゃんでしょ!』と叱ったことが何度かありました」と、答えました。

 

恐らくこの子は叱られて、「お母さんにきらわれた」と感じてしまったのでしょう。そこでお母さんには「とにかく『あなたのことが大好きよ』と言ってあげてください」とお願いしました。お母さんは家に帰ると娘さんに謝り、「お母さんはあなたのことが大好きよ」と抱きしめてあげたそうです。

 

娘さんはその後しばらく甘えていましたが、やがてもとの活発で優しい子に戻ったということです。

 

「大好きだよ」とフォローされない人も多い

子どもにとっていちばんの関心事は「母親にきらわれないこと」です。母親にきらわれることは子どもにとって生存の危機を意味します。母親にしてみればきょうだいを平等に愛することは当たり前でも、子どもはささいなきっかけで「親にきらわれている」と感じ、そこから親の手助けを拒絶する子に変わることもあるのです。

 

そこで親がフォローしなければ、親子間の距離は徐々に広がり、それが原因で愛着に問題が生じる人も珍しくありません。
 

 

村上伸治

精神科医