経済産業省が発表する「中小企業白書」によると、2022年時点での起業者数は約466万人となっています。起業の理由はさまざまですが、もともと会社員だった場合、独立後は「年金」に注意が必要であると、株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也FPはいいます。Aさんの事例をもとに、年金未納を続けた場合の「末路」と納付できない場合の対策についてみていきましょう。
年金なんて払うだけムダ…〈年金制度崩壊〉を信じてやまない「年収800万円・貯金2,000万円」55歳個人事業主の末路【FPの助言】
ある日、Aさんの自宅に届いた「赤い封筒」
順調に仕事を続けていたある日のこと、いつものように帰宅してポストを確認すると、1通の封書が入っていました。差出人は日本年金機構。
「なんだ、いつものやつか」と無視しかけたAさんでしたが、封筒の色が「赤色」であることに違和感を覚えたAさんは、家に入りその中身を確認してみることにしました。
Aさんのもとにはこれまでも何度か日本年金機構からハガキや封書が届いていたものの、Aさんには“ある理由”があったことから、あえて無視を決め込んでいたそうです。
しかし、書面の内容を確認してから、Aさんの顔は青ざめ、脂汗が止まりません。
「期限までに保険料が納付されない場合は、強制徴収を開始することがあります」
「強制徴収が開始されると、延滞金が課されるほか、財産が差し押さえられます」
Aさんはいったいなぜ、保険料を頑なに納めなかったのでしょうか。
Aさんが度重なる連絡を“あえて無視”していた理由
C社を退職してすぐ、独立にあたって必要な手続きを調べていたAさん。
「これまでは給料から天引きされていた税金も、これからは自分で納めなきゃいけないのか……高いし、少し面倒だな」
そう思いながらインターネットで情報収集していたAさんは、とある記事を読んで驚きました。その記事には“少子高齢化が進み、年金を払う人が少なくなっている。このままでは近い将来、年金制度が崩壊する可能性も”との見出しが。
「そう、なのか……」
独立してまだ日が浅く、収入が不安定ななか、国民年金保険料は月々1万6,980円と、ばかにならない金額です。
「これだけ高い金額を支払っても、将来制度が崩壊して年金がもらえない可能性があるなら、払うだけムダじゃないか?」
こうして「年金制度崩壊説」を信じるようになったAさんは、“あえて”年金を払わない選択をとっていたのでした。