令和3年総務省の「地方公務員給与実態調査結果」によると、令和3年時点で25年以上勤続した場合の教員の退職金平均額は約2,257万円でした。定年はまとまった資金が手に入るタイミングですが、ここで浮かれた結果“取り返しのつかない失敗”をしてしまう人も……。具体的な事例をもとに、老後破産危機に陥る原因と回避策についてみていきましょう。株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也FPが解説します。

俺に投資の才能があったとはな…退職金2,500万円の60歳元校長〈新NISA〉の運用益にご満悦→定年後1年で1,500万円を失う悲劇。元凶となった「同僚からの誘い」に後悔が止まらない【FPが解説】
自分のことは後回し…周りに尽くした校長先生のセカンドライフ
Aさんは大学を卒業後、教員として38年間を学校のなかで過ごしてきました。明るく情に厚い性格のAさんは、生徒や保護者、他の先生たちからも人気で、50代前半で校長先生に。60歳で定年を迎えた際、離任式では皆から惜しまれながら送り出されました。
教員となってからというもの、休みも子どもたちのことを考え、相談に乗ったり授業の準備をしたりと多くの仕事をこなしていたAさん。自分のことは後回しでした。
たまに職員室に訪れる保険外交員の勧めで生命保険には加入していたものの、周囲には投資などの本格的な資産運用を行っている人はおらず、話を聞く機会はありませんでした。
そんなAさんは、退職金として受け取った2,500万円の使い道に頭を悩ませます。世間は投資ブームのようでしたが、これまで経験のないAさんにとってはまるで他人事です。
「これからは毎日が日曜日だ。どうやって過ごそうか……」
そんなある日のこと。同じ時期に退職した同僚Bさんと喫茶店で話をしていると、「退職金を使って新NISAを始めた」ことを知ります。
「ほら、CMとかでもやってるだろう? 今年から制度が新しくなったそうなんだけど、NISAってのはすごいぞ! なにもしなくても勝手にお金が増えるんだ!」
「でも、NISAって投資だろ? 俺には怖くて手が出せんな」
これまで、投資はギャンブルのようなものだと考えていたAさんは、同僚の思わぬ発言に耳を疑います。
「いや、まあ投資ではあるんだけど、そんなに怖いものじゃないんだ。俺はNISAを使って投資信託っていうものを買ってみたんだけど、投資のプロが値上がりしそうな銘柄を集めて運用してくれるんだ。プロが選んだ銘柄だからリスクも少ないし、やってよかったよ」
「へえ……そんなものがあるのか」
Bさんと話したことで投資に興味を持ったAさんは、帰りに図書館で本を借り、自分でも調べてみることに。
「働いていないのにお金を使うのは気が引けるが、これで安定した利益を出せるなら少しくらい贅沢してもいいかもな」
Bさんの話を聞いて前のめりになっていたこともあり、本を読み終わるころにはすっかり投資に興味津々のAさん。本のなかで「初心者におすすめ!」と書かれていた先進国株式のインデックスファンドに投資することに。すると、運用成績は予想以上に好調。数ヵ月で10%以上の評価益となりました。