経済産業省が発表する「中小企業白書」によると、2022年時点での起業者数は約466万人となっています。起業の理由はさまざまですが、もともと会社員だった場合、独立後は「年金」に注意が必要であると、株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也FPはいいます。Aさんの事例をもとに、年金未納を続けた場合の「末路」と納付できない場合の対策についてみていきましょう。
年金なんて払うだけムダ…〈年金制度崩壊〉を信じてやまない「年収800万円・貯金2,000万円」55歳個人事業主の末路【FPの助言】
マメで正確な仕事をするAさんの“目の上のたんこぶ”
Aさん(55歳)は、大学を卒業してから長年、リフォーム業を営むC社に勤めていました。顧客とのやりとりもマメで、「またAさんにお願いしたいです!」といわれるほど仕事も正確。自分でも「天職だ」と自信を持っていました。
そんななか、“目の上のたんこぶ”となったのが、Aさんが50歳のときに転職してきたBさんの存在です。
Bさんは、技術力はあるものの、コミュニケーションは適当。他責的で、施工後に顧客から来たクレームについても「いや、そんなこと言われていない。完成後に文句を言われてもやりようないから」と一蹴。
顧客との密なやりとりに重きを置いていたAさんは、そんなBさんと衝突してしまうことも少なくありませんでした。
「会社全体の評判が下がる。Bを辞めさせられないか」と社長に相談したこともありますが、「人手不足だからしょうがないだろ。口は悪いが仕事はできる人だし、こっちから解雇することはできない。申し訳ないが我慢してくれ」と言われてしまい、ストレスを溜めながら一緒に仕事をするしかありませんでした。
そんなある日のことです。AさんとBさん、顧客のあいだで情報共有がうまくいかず、リフォーム完了後にミスが発覚。その相手はとある企業で、受注している案件のなかでは比較的大きな会社だったことから、倒産危機に陥るほどの大きな問題となってしまいました。
「Bのせいだろ」と思ったAさんですが、そう本人に伝えると「俺は俺のやり方で完璧にやった。Aのせいだ」と返されます。思わず取っ組み合いの喧嘩に発展したところ、止めに入った社長に「どっちも悪いところがある。連帯責任だ」と言われてしまいました。
「技術力もコミュニケーション能力もあるのに、ずっとここにいたらいつまで経っても成長できない。こんなところ辞めてやる!」Aさんは、30年以上働いたC社を辞め、独立することにしました。
ついに独立…“第2の人生”をスタートさせたAさん
そして、個人事業主としてリフォーム業を始めたAさん。仕事を得ようとかつての知り合いにつないでもらい声をかけますが、「ああ、あのC社にいた人ね」と会社の評判を理由に断られてしまいます。
C社のツテ以外に人脈もなく、収入も少なく、独立当初は不安定な日々を過ごしていました。
しかし、Aさん個人の仕事ぶりを知っている同業者から声がかかり、現場作業を手伝っているうち、だんだんと仕事が増えていきます。開業から数年経ち、年収はおよそ800万円に到達。前職の頃とあわせて、貯金も2,000万円ほどに。
「年齢を理由に諦めることも考えたけど、独立してよかった……」ほっと胸をなでおろすAさんでした。