近年急速に普及しつつある「SNS」。世界中の人と交流が可能になるのは魅力的ですが、悪意を持った詐欺師たちとも簡単につながることができてしまいます。本記事では、50代の佐藤さん夫婦の事例を取り上げ、「SNS型投資詐欺」の実態と被害にあわないために押さえるべきポイントについて、ファイナンシャルプランナーの内田優帆氏が解説します。
お前、なぜそんなことを…。58歳・大企業勤務のサラリーマン、悠々自適の老後を確信していたが「2,000万円の貯金消滅」で計画崩壊。原因は55歳〈専業主婦妻〉が知り合った「スマホの向こう側のお友達」【FPの助言】
悠々自適の老後を夢見ていた夫婦に突如訪れた危機
【登場人物】
夫:佐藤和也さん(58歳・仮名)…会社員
妻:佐藤絵里さん(55歳・仮名)…専業主婦
・年金見込み額:夫婦で月25万円
・資産額:2,000万円
・退職金予定額:2,000万円
・住宅ローン残債:1,500万円
佐藤和也さん(58歳)は、大企業に勤めるサラリーマン。これまで順調にキャリアを積み重ねてきました。2人の子どもはすでに独立しており、現在は55歳の妻、絵里さんと二人暮らしをしています。
資産状況も安定しており、資産は2,000万円。60歳で受け取る予定の退職金で、住宅ローンの残債を支払う予定です。それでも老後資金は十分あるので、65歳で退職したら夫婦でのんびりと趣味や旅行を楽しむ計画を立てていました。
しかし、妻・絵里さんの好奇心によって夫婦の計画は大きく崩れることとなります。絵里さんがインスタでたまたま見つけた「月利5%」「リスクなし」と謳う投資の広告。リンクをクリックすると、同じ年代の人たちが豪華な生活を送っている写真や成功者のストーリーが並んでいます。
「私と同じぐらいの年なのに、こんなにいい生活ができるなんて……いったいどうしたらこうなれるのかしら」
最初はちょっと見てみようというぐらいの気持ちでした。絵里さんは、その広告に載っていたLINEのリンクから投資グループに参加。しばらくはそこで交わされる会話を見ていましたが、次第に自分もコミュニティで質問や会話をするようになりました。
すでに成功している人たちの話や、これから投資を始めようとしている仲間たちとのやりとりは、専業主婦で交友関係があまり広くない絵里さんにとっては、とても楽しく刺激を受ける時間でした。
メンバーは絵里さんにとって友達のように信頼できる存在になっていきましたが、夫はSNSに疎いため、あれこれ言われても面倒だと内緒にしていました。
すっかりコミュニティに馴染んだ頃、絵里さんは投資グループのメンバーから実際に投資をしてみたらどうかと促されたのです。