定年前に役職定年…それでも会社にしがみつくか
役職定年が広がったのは1986年に施行された「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」、通称高年齢者雇用安定法によるもので、それまで主流だった55歳定年から60歳定年への努力義務が導入されました。この変更により、企業は人件費の増加を降格という形で抑えようとしました。
人事院の『令和5年民間企業の勤務条件制度等調査』によると、役職定年制度を導入している企業は16.4%で、そのうち95.6%が今後も継続する意向を示しています。一方、従業員500人以上の企業では30.7%が役職定年制を採用しており、こちらも95.7%が継続を予定しています。しかし、役職定年による降格や給与の減少は、高齢社員の働く意欲を大きく損なう要因とされています。高齢社員の生産性低下を解決するために、役職定年制の廃止が進むと予想されています。
65歳の加藤孝也さん(仮名)は大手企業で本部長として活躍していましたが、58歳で役職定年。60歳で定年、再雇用で65歳まで働くことができましたが、役職定年とともに会社を去ることにしたといいます。
役職定年後に用意されていたのは、プロジェクトマネージャーという専門職。給与は年収1,800万円から大きく減少し、600万円ほどになるといいます。管理職の多くが役職がなくなったあと、一般職として年下上司のもと、やりにくそうに働いているのをみてきましたが、そのような立場からすると相談役としてお気楽なポジションではあります。
しかし、役職定年を迎えた一部の人のためだけに設けられた特別なポジションであることは明らかで、現場からは「アドバイザーなんて、いる!?」と陰口を叩かれていることを加藤さんも知っていました。
――陰口をいわれてまで会社にしがみつくほど惨めなことはありません。私にもプライドがあります。そんな思いまでして会社に残る必要は感じられませんでした
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