「言い返さなきゃよかったね」…Aさんに訪れた“胸くそ”な結末

同僚からのいじめに疲弊していたAさんにとどめを刺したのが、この年の秋に行われた園長との面談だった。園長から、来年度のAさんの雇用契約について、「更新はしません。半年前に言ったから、あとは他を探してね」と雇い止めを通告されたのだ。

他の非正規職員は契約更新されており、園の経営が悪化した様子も見当たらない。理由を尋ねると、「みんながAさんの苦情を言っているから」だという。そして、面談の終盤、園長はこう口走った。「言い返さなきゃよかったね」。Bさんのからかいのことなのか、園児への虐待のことなのか。いずれにしても、波風を立てるような保育士はいらないと言われたも同然だった。

園長は、Aさんを追い出して、園に「平穏」を取り戻したいだけだった。過去にも園長は、自分が「気に入らない」保育士を突然辞めさせたことがあった。

Aさんは園長に対して、「改めるべきことは、改めます」と不本意ながら頭を下げた。

改めるべきはAさんではなく、非正規職員や園児を軽視し、保育園を「無事に」運営することしか考えていない園長の方なのだが、Aさんは従順に振る舞うことを選ぶしかなかった。

坂倉昇平
ハラスメント対策専門家