度を越した長時間労働に壮絶な職場いじめ……劣悪な職場環境に耐えかねたドライバーのAさんは、泣き寝入りすることなく、この状況を変えるために立ち上がりました。いったいどのような行動を起こしたのか、『大人のいじめ』(講談社)より、著者でハラスメント対策専門家の坂倉昇平氏が、実際にあったケースを紹介します。

許せない…朝5時起床→23時帰宅も「定額働かせ放題」で残業代ゼロ、限界を迎えた30代サラリーマンの“逆襲”【ハラスメント専門家が解説】
昼食は運転しながらのおにぎり…お弁当を食べる時間はない
自動販売機の補充をするドライバーの長時間労働
自販機の商品を運搬するドライバーであるAさん(現在30代・男性)は、当時入社5年目。仕事はすっかり板についていたが、労働時間は一向に短くならなかった。1日の典型的なスケジュールは、次の通りだ。
朝7時35分頃に営業所に到着、8時にはトラックに乗って営業所を出発する。担当する自販機の近くに駐車すると、商品の詰まった段ボール(ほぼ水分のため非常に重量がある)を持って、施設の場合は各フロアまで運び、商品の補充、集金、賞味期限が切れそうな商品の管理、自動販売機の横に設置されたゴミ箱のゴミ回収、飲料メーカーの指示に応じて新商品への入れ替え・ディスプレイの変更などを行う。
商品が売り切れになっているなどのクレームを携帯電話で受けて、すぐ対応に向かうことも頻繁にある。秋には自販機の温度設定を温かく、初夏には冷たく切り替えて、中身もすべて入れ替える。自販機内の商品をすべて抜き取って、数を数える「棚卸し業務」も定期的に行われる。
こうした作業をしながら、1日に約20ヵ所の自販機を回るのが日課だ。しかも、同僚の担当は100〜120台だったが、Aさんは180台も割り当てられ、職場でも断トツの多さだった。
昼食は、車を運転しながら、コンビニで買ったおにぎりを口に突っ込む。時間がないので、お弁当などはとても買えず、カップ麵でも「マシ」なほう。飲食店で昼食をとったことは、5年目まで1度もなかった。
営業所に帰ると、すでに時刻は20時頃。外回りだけでも12時間労働だ。その後も、トラックに積んだ大量のゴミを捨て、翌日の商品の積み込みを行い、その日の業務報告を提出する。職場をあとにするのは21時や22時を過ぎることもあった。
帰宅時間は遅いと23時頃で、家では夕飯を食べて、入浴して寝るだけの生活。翌朝は5時起きで6時過ぎには家を出ていた。Aさんの体は限界を迎えていた。