とある老人ホーム・介護施設の惨状

入居者を虐待するか、自分がいじめられるかの2択

Kさんが勤務する老人ホームでは、複数の職員による誹謗中傷や「指導」と称したいじめが繰り返されていた。

その背景として、介護士のうちほぼ半数にあたる10名が、日常的に入居者を虐待していたことが挙げられる。徘徊する入居者には部屋の外から鍵をかけ、認知症や難聴の入居者に対しては耳元で怒声を浴びせる。オムツをきつくあてる影響で、嘔吐する入居者も続発していた。ベッドの上で腕をつかみ、力ずくで体の向きを変えられ、骨折した寝たきりの入居者も複数いた。

こうした介護に同調できない職員は、施設内で嫌がらせを受けるだけでなく、逆に虐待をしているという「クレーム」を法人に「告発」され、解雇に追い込まれそうになったこともあった。

多忙のなか、一部の職員たちの倫理観が失われたことで、入居者は杜撰に「管理」され、ストレスの「はけ口」となっていた。そして、こうした虐待の横行を法人は放置し、特段の対応はなされなかった。

Kさんは虐待の事実を自治体に通報。入居者全員から聞き取りが行われ、改善命令が出された。匿名の内部告発のため、Kさんが通報者だとは知られていない。しかし、命令後も、部屋の鍵を外からかける対応は続いているという。

不衛生な現状に苦情→いじめの標的に

介護福祉士の資格を持つLさんは派遣会社に登録し、100名以上が入居する介護施設で働くことになった。働く前のオリエンテーションでは、「感染症予防はきっちりしています」「看護師も常駐しています」と言われていた。

ところが、実際には看護師は常駐しておらず、排泄介助や清掃の際にも手袋をはめず、消毒液による手指消毒も行わない、不衛生な介護が常態化していた。このままでは、職員にも利用者にも、感染症が拡大する可能性が高い。あまりの不衛生さに、Lさんは派遣会社の相談窓口に、「話が違う」と苦情を伝えた。

すると、Lさんは現場リーダーの介護士から面談の呼び出しを受けた。改善されるのかと思いきや、「お前、外に漏らしただろ」「気に入らなければ辞めてもらっていい」と逆に𠮟られてしまった。

その後、Lさんを標的としたリーダーの介護士によるいじめが始まった。特に、わからないことを質問すると、「そんなことも知らねえのか」と当てつけのように𠮟責されるようになった。派遣会社に相談しても、「合わないなら仕方ない」「1ヵ月くらい、いてみたら」とつれない対応に終始するだけだった。

Lさんはうつ病を発症。病院でストレス軽減の薬を処方されており、病状が悪化しないうちに退職するつもりだ。