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「ブラック企業対策」「働き方改革」の陰で深まる“闇”

2010年代、「ブラック企業」への社会的な批判の高まりや、過労死・過労自死に対する遺族や支援団体の運動を受けて、政府が「ブラック企業対策」を政策に掲げ始めた。長時間労働による死亡や、業務によって精神障害が引き起こされるのを防ぐよう、国が対策を取ることを定めた過労死等防止対策推進法が制定され、「働き方改革」が推し進められた。2016年秋には、大手広告代理店の電通で1年前に起きた、新入社員の高橋まつりさんの自死が労災として認定され、これを機に、大企業における長時間労働対策が一気に進み始める。

このように、長時間労働やハラスメントが社会問題化し、それらは禁止すべき行為であると啓発されたはずだった。しかし一方で、こうした「改革」とは無縁どころか、しわ寄せを受けている職場もあった。

白昼の駅前で起きた流血事件

2010年代後半、20代男性のAさんは、メディア業界の下請企業に勤務していた。この会社では、業界大手の働き方改革の影響を受けて、かえっていじめと暴力が猛威を振るうようになっていた。

事件は、ある大都市のターミナル駅の前で起きた。その日、取引先に同行する外回りの仕事を、Aさんが、Aさんより数年早く入社したチームリーダーの先輩と終えた直後のことだった。

Aさんは先輩から、取引先の見送りには加わらず、すぐ事務所に戻って、当日のデータをまとめるように指示されていた。タクシーが駅前に着き、先輩と取引先を降ろして、自分はそのまま事務所に戻って作業すべくタクシーに行き先を告げようとした瞬間だった。

「なんで降りてこねえんだよ!」

先輩が声を荒らげた。理不尽なことに、さっき指示されたことと話が変わっている。Aさんが見送りする素振りも見せないことが気に障ったようだった。