職場いじめにおいてもっとも相談件数の多い「医療・福祉」業界。大手フランチャイズの介護施設でパート勤務にあたる30代女性Iさんも、先輩職員からの陰湿ないじめにあっていました。しかし、その背景には個人間の問題を超えた“深い闇”があったのです……。『大人のいじめ』(講談社)より、ハラスメント対策専門家の坂倉昇平氏が著書『大人のいじめ』(講談社)より「職場いじめ」の実例をみていきましょう。

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トイレはちょっと待って!…介護施設で起きた「壮絶な職場いじめ」背景にある“深い闇”【専門家が解説】
“女の妬み”だと思っていたが…30代女性が受けた「陰湿ないじめ」
パートながら週5日フルタイム、夜勤もありの業務をこなす30代Iさん
30代女性のIさんが勤務していたのは、介護施設の大手フランチャイズの看板を掲げた、小さな株式会社だった。
業態は、利用者が通所して介護を受けるデイサービスだ。Iさんは、准看護師と介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)の国家資格を持っており、リハビリと介護の業務を担当していた。契約上はパートタイムで時給制だったが、実際には週5日・1日8時間のフルタイムで、夜勤もありの仕事を真面目にこなしていた。
執拗な侮辱、休日希望は拒否、昼休憩もなし
社長である施設長が施設に来ることはほとんどなく、役職のない4人の職員に現場のすべてが任されていた。その1人である女性の先輩職員から、Iさんは陰湿ないじめに遭っていた。
この先輩は、Iさんの容姿や服装をいかがわしいとでも言いたげにあげつらい、「男を誘ってるんでしょ」などと執拗に侮辱してきた。Iさんは、先輩より若い自分に対する「女の妬み」だと感じていた。
嫌がらせは業務にも及んだ。勤務日のシフトを決める際、Iさんが休日の希望を出すと、「甘えてる」「独身なんだから会社を一番に考えて」などと吐き捨てるように言われ、拒否された。
夜勤についても、もともとIさんは精神疾患を抱えており、面接時に社長にできないと伝えていた。ところが、これを断ろうとすると、「なんでやらないの」と無理やり入れられてしまった。昼ご飯の時間すら、「いま、そんな場合じゃないでしょ」「なに休憩してるんだよ」と休ませてもらえなかった。
Iさんの父が事故で亡くなったときでさえ、「仕事か親か、どっちかをとれ」と出勤を迫られるほどだった。
こうした先輩によるIさんへのいじめの背景には、「女だから」「妬み」などでは説明できない、職場の崩壊があった。