自分や身近な人がハラスメントを受けた際、突然のことに驚いてショックを受けてしまい、冷静な対応ができない場合があります。しかし、泣き寝入りだけはしたくない……では、自分の身を守りながら、加害者へ適切に復讐するにはどうすればいいのでしょうか。ハラスメント対策専門家の坂倉昇平氏が著書『大人のいじめ』(講談社)より、「職場いじめ」に遭った際にとるべき行動と避けるべき行動を紹介します。

職場で「セクハラ」「パワハラ」を受けた→“SNSで暴露”や“退職”は悪手…自分を守りながら相手に罰を与える“とっておきの復讐”【ハラスメント専門家の助言】
職場いじめに悩む人への実践的アドバイス
「録音」は特に効果的
自分や周りの人がハラスメントの被害に遭っていた場合、どうするべきだろうか。
第1にするべきは、ハラスメントの「事実認定」をクリアするための準備である。そのために、最優先でしてほしいのが、証拠集めだ。証拠がない場合、会社や加害者にいじめの事実を認めさせるのは、かなり難しいと思っておいた方が良いだろう。
メールやチャット、SNSなどで被害を受けた場合は、パソコンやスマートフォンの画面を撮影したり、スクリーンショットを撮ったり、文章のデータを保存したりしておこう。メモも大事だ。いつ、どこで、誰から、どのような言動を受けたのかを、できるだけ詳細に書いておこう。負傷させられた場合は、その箇所を撮影し、病院で診断書をもらっておくことが肝心だ。
なかでも、特に効果的なのは「録音」だ。ICレコーダーやスマートフォンのアプリなどで、相手の発言や行為を録音しよう。その際、相手に合意を取る必要はない。
相手に黙って録音するのは、「隠し撮り」や「盗聴」と同じじゃないかと気が引けるかもしれないが、「秘密録音」は裁判でも証拠として採用されており、罪悪感を覚える必要は全くない。いじめを行う方が悪いのだ。
録音は、「暴行」の証拠になることもある。筆者が担当した事件で、相談者が店長に殴られたり、蹴られたりしたときの音声を携帯電話で録音していて、それを持って警察に告訴状を提出したところ、加害者は書類送検、略式起訴されて罰金刑となったこともある。
ハラスメント発言は、話し合いの席でされることも多い。その場合は、あらかじめ録音をオンにしておくことだ。いきなり呼び出された場合は、「先にトイレに行ってきます」などと、いったん席を外し、録音のスイッチを入れると良いだろう。
しかし、予告なく、突然暴言が浴びせられるケースもある。ハラスメントの発生するタイミングが予想できず、勤務中ずっと録音状態にしていた相談者もいる。その場合、後で録音全部を確認するのは大変なので、何日の何時頃にどんなことがあったかだけでも、メモしておくと良い。
同様に、ハラスメント被害の様子を、動画で「撮影」するという方法もある。ハラスメントがわかるような映像を撮るには技術が必要だが、もしできそうなら試してみるのも手だ。
録音に失敗したときの「奥の手」
ハラスメントを受けたのに、その場で録音できなかったら、あとは記憶を頼りにメモするしかないのだろうか。
これは「奥の手」だが、改めて、今度は録音しながら「先ほど、こう言いましたよね?」「こういうことをしたじゃないですか?」と聞いて、回答を引き出すという方法がある。ここで、加害者から「したけど、不満でもあるの?」「それがどうかした?」などの答えが録音できれば、重要な証拠として使える。
もちろん、「そんなことあったっけ?」などと返されたり、無視されたりと失敗する可能性もあるが、やってみる価値はある。同様に、メールやチャット、SNSで加害者に質問するのも、手段の1つだ。