年金停止となった「働きながら年金を受け取る高齢者」は50万人
在職老齢年金の上限額は現役男性被保険者のボーナスを含む平均月収を基準として設定し、賃金変動に応じて毎年度改定が行われるもの。2022年度末時点で、65歳以上の在職している年金受給権者は308万人、在職停止者は50万人。これは在職の16%にあたり、受給権者の1.7%。そして支給停止額は約4,500億円にのぼります。
厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』によると、男性の平均給与は月38.5万円。60代前半では35.6万円、60代後半が31.0万円です。高齢者の給与額は上昇傾向にあり、10年前と比較すると、60代前半で20%、60代後半で13%アップ。今後、さらに年金停止となる高齢者は増えると考えられます。
在職老齢年金の支給停止は、基本月額と総報酬月額相当額の合計が50万円を超える期間に適用されます。具体的な期間は以下のように決まります。
▼標準報酬月額の決定
通常、4月から6月までの給料をもとに決定されます。この決定された標準報酬月額は、その年の9月から翌年8月まで適用されます。
▼支給停止の開始
9月から新しい標準報酬月額が適用され、基本月額と総報酬月額相当額の合計が50万円を超えると、その時点から支給停止が開始されます。
▼随時改定による変更
年の途中で給与が大きく変動した場合(原則として2等級以上の変動)、随時改定が行われます。この場合、給与改定があった月から数えて4カ月目から新しい標準報酬月額が適用されます。
▼支給停止の終了
基本月額と総報酬月額相当額の合計が50万円以下になった月から支給停止は終了します。
支給停止は月単位で判断され、50万円を超える月から適用され、50万円以下になる月まで継続します。ただし、標準報酬月額の変更タイミングによって、実際の給与変動と支給停止の開始・終了にはタイムラグが生じる可能性があります。
厚生労働省は、高齢者の就労意欲向上のため、在職老齢年金制度の見直しを検討しています。主な検討案は「支給停止基準額の引き上げ」と「制度自体の廃止」。基準額は62万円への引き上げ、71万円への引き上げの2案が出ています。これらの見直しにより、働く高齢者の年金給付が増える一方で、将来世代の給付水準低下が課題となっています。
また、厚生年金の保険料算出基準となる「標準報酬月額」の上限を現在の65万円から10万円以上引き上げる案も検討されています。これらの見直し案を社会保障審議会の部会に提示し、来年の通常国会に必要な法案を提出する方向で調整。高齢者の今後の働き方を左右するものなので、注目していきたいものです。
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