たくさんの薬を処方するのは、医師が儲けたいからではない

一方で、普段から高齢者の集まっている病院もあります。そういったところには患者の話をよく聞いてくれて、相談しやすい医者が少なからずいるものです。

「待合室が高齢者のサロン化している」「保険料のムダ遣いだ」などと批判されることもしばしばありますが、高齢者にとって快適で健康にもいい病院だからこそ、多くの人が集まるというのも事実なのです。高齢者にとっての理想は、薬への不満をしっかりと受け止めてくれる医者と出会うことです。

「飲むと調子が悪くなります」と訴えたときに、「少し減らして様子を見ましょう」と臨機応変に対応してくれるなど、話しやすく、会うと気持ちが楽になる相性のいいかかりつけ医を見つけたいものです。

ちなみに、薬の過剰投与がなぜ起きるのかというと、これは病院が儲けたくてやっているわけではありません。処方する薬が3種類から5種類になったところで、病院や医院の収入はまったく変わりません。

では、なぜたくさんの薬を処方するのでしょうか。

医者が総合診療としての教育をまともに受けていないためです。『今日の治療指針』という医者向けのマニュアル本があるのですが、そこに書かれている標準治療薬を診断名に合わせてそのまま処方しているため、薬がどんどん増えてしまうのです。

つまり、やたらと薬を処方するのは、臨床医としての未熟さの表れとも言えます。

和田 秀樹

国際医療福祉大学 教授
ヒデキ・ワダ・インスティテュート 代表
一橋大学国際公共政策大学院 特任教授
川崎幸病院精神科 顧問