すべての元凶は「感情の老化」にあり

私は30年以上にわたって老年精神医学にたずさわり、数多くの高齢者と接してきました。その中で常々感じているのが、「老化とひとことでいっても、個人差がとても大きい」ということです。

高齢になってもいろいろなことに興味を持ち、若い人とも積極的に交流するようなアクティブな人もいれば、還暦を迎えたばかりなのに始終不機嫌な表情で、ほとんど世の中とは関わらずに引きこもってしまう人もいます。

見た目に関してはその差がもっと大きく、実年齢よりも10歳以上若く見える人もいれば、15歳くらい老けて見える人もいます。その差はいったいどこにあるのでしょうか。

私は「感情の老化」がすべての元凶なのではないかと考えています。

40~50代をどう過ごすかで60代以降がガラリと変わる

一般的に「老化」といえば、「健康」「脳」「見た目」の三つの衰えが思い浮かぶでしょう。足腰が弱ったり、筋力が落ちたり、疲れが抜けにくく体調を崩しやすくなるのが健康面、体の衰え。物の名前が出てこなくなったり、新しいことを覚えられなくなったり、考えがまとまりにくくなるのが脳の衰え。そして、皮膚の張りが失われたり、体形が崩れたり、シミやしわが増えるのが見た目の衰えです。

これらの老化を防ぐために、多くの人はジムに通ったり、ダイエットなどで健康管理をしたり、また、会話や交流をして脳機能の低下を防ごうとしたり、美容やファッションなどに気を使って見た目の衰えを補おうとしたりします。

もちろん、こうした努力は必要なのですが、それ以前に手を打つべきなのが、じつは「感情の老化防止」であり「感情を若々しく保つこと」なのです。

感情の老化は、40~50代で始まります。この時代をどんな意識を持ってどう過ごすか、どう過ごしてきたかによって、60歳以降がガラリと変わるのです。