定年を迎え仕事を辞めたら、どのように過ごそうと考えているでしょうか? 趣味の世界にどっぷり浸かる……そんなことを考えている人もいるでしょう。どうやら、趣味の世界にどっぷり浸かることのできる人は、ある意味、幸せかもしれません。
30年ぶりの『ドラクエⅢ』に心を躍らせる〈退職金1,500万円〉〈貯金2,300万円〉65歳定年退職サラリーマン、「さあ、冒険に出よう!」とテンション爆上げの3日後、軽い絶望感を覚えた「まさかの理由」 写真はイメージです/PIXTA

30年前に3ヵ月間熱狂したゲームを3日でクリアしたが…

――さあ、冒険に出よう!

 

30年前に胸を躍らせた『ドラクエⅢ』の世界観にもう一度浸ることができる……井上さんオープニングからテンションはかなりの爆上げで、家族の声も聞こえないほどの熱中ぶりだったとか。

 

30年前はクリアまで3カ月近くかかったといいますが、今回はわずか3日ほどでクリア。30年前と同じようにすごい高揚感と充実感に包まれている……かと思えば、どちらかといえば茫然自失。30年ぶりの『ドラクエⅢ』は面白くなかったのか……というとそういうわけではなく、30年前よりも面白かったといいます。それなのにこの表情は?

 

――急に、この先、何を楽しみにして生きていけばいいのか、不安に襲われて

 

話を聞いていけば、30年前は3カ月もかかったゲーム。それは仕事が忙しいなかでプレイしていたからであり、今回3日でクリアしてしまったのは、とにかく時間だけはたっぷりあるから。この「時間だけはたっぷりある」という状況に対して、どう生きていくのかなど、まったく見通しがないことに、軽い絶望感を覚えたというのです。

 

――趣味らしい趣味もなく、家でやることといえば、食べて、寝て、妻の家事を手伝って……これまでは私には仕事がありましたが、何もないことがこんなにも不安だとは思ってもみませんでした

 

株式会社LIFULL seniorが30代以上の男女に対して行った『趣味が楽しめる理想の老人ホームについてのアンケート調査』によると、『現在、楽しんでいる趣味や余暇活動はあるか』の問いに対して、「ない」は34.6%。また「現在楽しんでいる趣味や余暇活動を75歳以上になっても続けていると思いますか?」の問いに対しては、「続けていると思わない」が16.1%、「わからない」が23.3%でした。

 

現役世代の3人に1人は無趣味。また趣味があったとしても老後もできるものかといえば、難しい場合も相当数いるようです。

 

また、最近注目されている「学び直し」。時間があるシニアほどおすすめではありますが……株式会社パーソル総合研究所『ミドル・シニアの学びと職業生活についての定量調査』によると、「学び直し」をしているのは趣味の学びも含めると22.6%。29.8%は自ら学び直す意欲はあるが、特に学んではないという「口だけ層」。さらに47.5%は自ら学び直す意欲がなく、特に学んでいないという「不活性層」と定義しています。

 

この結果からも、定年後に特に何もすることがない人は相当いる模様。このなかには、井上さんのように「何もすることがないことに不安を覚える人も多いことでしょう。

 

――仕事しかない人間が仕事を辞めたら、何の価値があるのでしょう

 

何か趣味を見つけるよりも仕事復帰したほうが手っ取り早く、健康なうちは働くのも選択肢だと井上さん。世界銀行が発表する各国の平均寿命によると、日本は84.00歳と世界第3位。またWHOが公表している各国の健康寿命も、日本は73.40歳と世界第2位。井上さんがいうように「健康なうち」まであと8年ほど。その間、仕事をするというのも、老後のひとつの過ごし方なのかもしれません。

 

[参考資料]

株式会社LIFULL senior『趣味が楽しめる理想の老人ホームについてのアンケート調査』

株式会社パーソル総合研究所『ミドル・シニアの学びと職業生活についての定量調査』