詐欺の被害で大金を奪われたといったニュースを見て「なんで騙されるの?」と疑問に思ったことがある人は多いでしょう。ですが、「自分は大丈夫」と自信がある人ほど注意しなくてはなりません。なぜなら、「簡単に稼げる」という誘惑に人は驚くほど弱くなるからです。行動経済学を知り尽くした詐欺師たちは、私たちの心の隙間を狙い撃ちにするよう緻密に設計された手口で、最後には全財産を奪い去ります。今回は59歳、業界歴30年のベテラン営業マンが、若手上司への憤りと早期退職への渇望から6,000万円を失った事例を、ファイナンシャル・プランナーの青山創星氏が詳しく解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
お願いですから戻らせてください…資産1億2,000万円で歓喜の早期退職を実現した59歳会社員、わずか3ヵ月後に元職場へ復職の直談判。発端はある日届いた「LINEの通知」【FPの助言】
プロの詐欺師はこうやってあなたの心を操る―具体的な手口と防衛策
瀬戸島さんの悲劇的な体験は、決して特殊なケースではありません。誰もが同じような状況に陥る可能性があります。このような詐欺に遭わないためには、以下のポイントに注意することが重要です。
1.「簡単に稼げる」という話には常に疑いの目を向ける。
2.投資の基本知識を身につけ、リスクについて正しく理解する。
3.金融商品を扱う業者が金融庁に登録されているかを必ず確認する。
4.大きな決断をする前には、必ず家族や信頼できる人に相談する。
5.全財産を一つの投資に集中させることは避け、リスク分散を心がける。
6.退職金の運用方法については、専門家のアドバイスを受ける。
7.SNSでの投資勧誘には特に注意を払う。
このケースでは、口座の損益状況をリアルタイムで見ているかのように錯覚させ安心させるというのが、だましのテクニックのキモです。
しかし、それだけではなく詐欺師たちは行動経済学上の心理的効果やバイアスを巧みに利用して、図にまとめたような流れで信頼感を高めたりニセの取引にのめり込ませたりさせています。
【図表】詐欺師の巧みな手口
こうした知識を身に付けておくことがなにより大切ですが、万が一被害に遭ってしまった場合は、すぐに以下の機関に相談しましょう。
- 警察、金融機関
- 消費者ホットライン(188)
- 国民生活センター
- 金融庁(金融サービス利用者相談室)
瀬戸島さんのケースは、私たちに重要な教訓を与えてくれます。人生の転機において、焦りや不安感、開放感から冷静さを失わないこと。そして、「簡単に稼げる」という甘い誘惑に惑わされないことの大切さを教えてくれています。瀬戸島さんの苦い経験を、私たちの未来を守るための貴重な教訓として活かしていきましょう。
青山 創星
ファイナンシャル・プランナー
