「どうか戻らせてください」失った約6,000万円と尊厳、そして妻の信頼

銀行や警察に連絡しました。しかし、資金は送金当日に引き出されていて追跡もできないとのこと。振り込め詐欺救済法により、口座にお金が残っていれば一部お金が戻ってくる可能性もありますが、このケースは無理とのこと。また、この種の詐欺師は海外にいる場合も多く、詐欺師を捕まえることはほとんど不可能とのことでした。

今から考えると、指定された口座の名義が個人名でその口座も何度も変わったり、少しメッセージの日本語がおかしいと感じたりしたこともありました。

貯金3,000万円と退職金2,000万円、そして、両親、弟、消費者金融から借りたお金の合計約6,000万円が一瞬にして消えてしまったのです。先生もアシスタントも生徒たちも、投資システムの画面に映し出されていた増え続ける資産も、すべて偽物だったのです。

妻の優子さん(仮名、57歳)に事実を告げたとき、瀬戸島さんは妻の表情が凍りつくのを目の当たりにしました。

ついに、瀬戸島さんは意を決して、かつての勤め先を訪れ人事部長に頭を下げて懇願しました。「どうか、私を戻らせてください。どんな仕事でも構いません」

人事部長は、困惑の表情を浮かべながら「瀬戸島さん、正直に言うと難しいですね」その言葉に、瀬戸島さんの心は凍りつきました。