詐欺の被害で大金を奪われたといったニュースを見て「なんで騙されるの?」と疑問に思ったことがある人は多いでしょう。ですが、「自分は大丈夫」と自信がある人ほど注意しなくてはなりません。なぜなら、「簡単に稼げる」という誘惑に人は驚くほど弱くなるからです。行動経済学を知り尽くした詐欺師たちは、私たちの心の隙間を狙い撃ちにするよう緻密に設計された手口で、最後には全財産を奪い去ります。今回は59歳、業界歴30年のベテラン営業マンが、若手上司への憤りと早期退職への渇望から6,000万円を失った事例を、ファイナンシャル・プランナーの青山創星氏が詳しく解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
お願いですから戻らせてください…資産1億2,000万円で歓喜の早期退職を実現した59歳会社員、わずか3ヵ月後に元職場へ復職の直談判。発端はある日届いた「LINEの通知」【FPの助言】
「どうか戻らせてください」失った約6,000万円と尊厳、そして妻の信頼
銀行や警察に連絡しました。しかし、資金は送金当日に引き出されていて追跡もできないとのこと。振り込め詐欺救済法により、口座にお金が残っていれば一部お金が戻ってくる可能性もありますが、このケースは無理とのこと。また、この種の詐欺師は海外にいる場合も多く、詐欺師を捕まえることはほとんど不可能とのことでした。
今から考えると、指定された口座の名義が個人名でその口座も何度も変わったり、少しメッセージの日本語がおかしいと感じたりしたこともありました。
貯金3,000万円と退職金2,000万円、そして、両親、弟、消費者金融から借りたお金の合計約6,000万円が一瞬にして消えてしまったのです。先生もアシスタントも生徒たちも、投資システムの画面に映し出されていた増え続ける資産も、すべて偽物だったのです。
妻の優子さん(仮名、57歳)に事実を告げたとき、瀬戸島さんは妻の表情が凍りつくのを目の当たりにしました。
ついに、瀬戸島さんは意を決して、かつての勤め先を訪れ人事部長に頭を下げて懇願しました。「どうか、私を戻らせてください。どんな仕事でも構いません」
人事部長は、困惑の表情を浮かべながら「瀬戸島さん、正直に言うと難しいですね」その言葉に、瀬戸島さんの心は凍りつきました。