理想の田舎暮らしのはずが、待ち受けていた現実は…

吉田さん夫妻が移住先として選んだのは、甲信越地方のある町です。旅行で訪れた際に夫婦ともに気に入ったことから、移住先として決めました。

吉田さんは、元の会社の繋がりからリモートワークが可能な仕事を見つけることができました。オンラインで企画営業ができる仕事で、月に1回など必要に応じて本社のある東京に行くという仕事のスタイルです。年収は大幅に減りましたが、それでも生活コストは下がるだろうし、貯金を考えれば十分だと納得して働くことを決めました。

移住先に気に入った物件も見つかったため、退職金を使って終の住処として一戸建てを購入。自然が多く、広い土地で思い切り家庭菜園を楽しめる環境です。そして、いよいよ移住先でのスローライフが始まりました。

しかし、住んでみるうちに、想像していた暮らしとは違うところが見えるようになってきたのです。

移住先の町は移住者の受け入れを積極的に行っていると聞いていましたが、ご近所さんは皆、昔から住んでいる人ばかりで、なかなか地域のコミュニティに入っていくことができません。子育て中ではないため、子どもを通した親同士のつながりができることもありませんでした。

特に妻は、東京では友人ともパート仲間とも楽しくやっていましたが、こちらの排他的ともいえる雰囲気にうまくなじむことができません。気軽に話せる相手が夫しかおらず、徐々に孤独を感じるようになっていきました。

また、東京暮らしが長い吉田さん夫妻は、地方へ移住すれば生活費が減ると思い込んでいましたが、想定以上にかかることもわかってきました。移動の手段として欠かせない車の購入や維持費、暖房器具、雪対策グッズなどの費用が積み重なり、支出が減りません。

冬の寒さや雪も覚悟していたつもりでしたが、いざ直面してみると思っていた以上に身体にこたえ、雪下ろしの作業も重労働。家庭菜園も降り積もる雪に断念し、広い土地だけが残りました。