老後はせわしない都会暮らしから抜け出し、自然が多くゆったりとした時間の流れる田舎暮らしをしたい……そんな夢を持つ人もいるでしょう。なかには、人生を謳歌するため定年を待たずに移住に踏み出したいという人もいるかもしれません。しかし、理想の暮らしを実現したと思っても、実際に生活してみると思い描いていたものとは違った……と後悔することも多いのです。本記事では、ファイナンシャル・プランナー(CFP)の伊藤寛子氏が、定年を前にして移住に踏み切った吉田夫妻を例に、早期退職や地方移住を考えている人が行動に移す前に注意すべき点について解説します。
わたしだけでも東京に戻ります…。52歳・資産2,000万円の会社員、早期退職を決断し妻の夢だった「田舎暮らし」を実現したが…わずか2年後、まさかの事態に大後悔「移住なんてするんじゃなかった」【CFPの助言】
地方移住を成功させるコツ
2人が夢見た田舎への移住でしたが、途中で断念せざるを得なかったのは、「想定不足」だったからです。早期退職と移住というライフイベントとして大きな決断をするためには、入念に資金計画と、新生活の想定をしておく必要があります。
旅行で訪れた印象と実際の暮らしとは異なります。公的機関の移住相談会等に参加するのはもちろんのこと、地域行事や移住支援をしている民間団体が開催しているイベントなどに参加して、地元の人たちと実際に関わりを持つことが大事です。そのような機会を通して移住前から関係性を作ることができると、移住後の人間関係も広がりやすくなるでしょう。
また、始めから完全に移住するのではなく、一定期間住んでみる、週末移住など、お試し移住から始めることもできます。本当に移住先の暮らしが合っているのかどうか、経済的な面からも慎重に判断しましょう。
早期退職の決断も、退職金とまとまった貯蓄があるから何とかなるだろうと楽観せずに、ライフプランで退職後の資金計画をしっかりシミュレーションしましょう。希望の暮らしのパターンだけでなく、こんなことが起きるかもしれないと、想定されるリスクも踏まえたパターンもシミュレーションしておくことが大事です。
退職後の仕事をどうするか、退職後の生活費の見直し、退職金の使い方、資産運用による対策など、考えておくべきことは多岐に渡ります。
自分では気づきにくい視点も多々あることから、早期退職を計画する際にはファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談し、個別の状況に応じたアドバイスを受けることをお勧めします。
定年前にライフスタイルを変えることが悪いわけではありません。やりたいことがあるのに、とにかく定年まではと我慢をするのはもったいない場合もあります。
やりたいことを実現するためにこそ、ライフプランで希望のプランとともに、リスクや対策まで想定しておくことで、やりたいことの実現により安心して進むことができるでしょう。
伊藤 寛子
ファイナンシャル・プランナー