外からは平和に見えても、その陰でひそかに問題を抱えている家庭は少なくありません。例えば、今回ご紹介するような家族の長期的なひきこもりです。その背景には複雑な社会的・心理的な要因が絡み合っており、単純な原因や解決策だけでは対応しきれないのが現実です。今回は、年金暮らしをしている坂口剛史さん(仮名・66歳)とその長男(40歳)を事例に、ひきこもりの現状と課題、支援方法について南真理FPが解説していきます。
一見平和な家庭に見えるが…年金24万円、資産2,000万円・年金暮らしの66歳元会社員がひた隠しにする「2階突き当たりの部屋」の秘密
50人に1人程度がひきこもり状態に該当
厚生労働省の「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」によると、ひきこもりとは「様々な要因の結果として、就学や就労、交遊などの社会的参加を避けて、原則的には6ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態のこと」と定義されています。
内閣府が公表する「こども・若者の意識と生活に関する調査」(令和4年度)によると、ひきこもり状態に該当する人は、15~64歳では推計146万人、50人に1人程度とされています。
15歳~39歳でひきこもり状態に該当する人は、多くは親兄弟と同居しています。ひきこもり状態になった年齢は、20歳以上の割合が約6割です。また、7年以上ひきこもり状態が続いている人が全体の21%となっています。
また、40~64歳でひきこもり状態に該当する人は配偶者との同居が全体の半分以上を占めており、次いで同居人がいない、子どもという結果です。初めてひきこもり状態になったのが、40歳以上という人が全体の7割を占めています。そして、ひきこもりの期間が7年以上という人が23%です。
この背景には、退職や人間関係がうまくいかなかったこと、新型コロナウイルスの流行、病気、中学校時代の不登校、妊娠、介護・看護を担うことになったこと、就職活動がうまくいかなかったことなど、様々な要因が複雑に絡み合っています。