外からは平和に見えても、その陰でひそかに問題を抱えている家庭は少なくありません。例えば、今回ご紹介するような家族の長期的なひきこもりです。その背景には複雑な社会的・心理的な要因が絡み合っており、単純な原因や解決策だけでは対応しきれないのが現実です。今回は、年金暮らしをしている坂口剛史さん(仮名・66歳)とその長男(40歳)を事例に、ひきこもりの現状と課題、支援方法について南真理FPが解説していきます。
一見平和な家庭に見えるが…年金24万円、資産2,000万円・年金暮らしの66歳元会社員がひた隠しにする「2階突き当たりの部屋」の秘密
ひきこもりの解消には支援制度などの活用を
ひきこもりの問題を解決するために、できることは何があるのでしょうか。ひきこもり状態の方が抱える課題は、心理的・経済的な問題や社会的スキルの不足など多岐にわたります。そのため適切な専門家に相談することで本人や家族の負担を軽減することができ、少しずつ改善に向けたステップを踏むことが可能です。どのような支援制度があるのか確認しましょう。
ひきこもり支援推進事業
厚生労働省が主体となって取り組んでいるひきこもりの方やその家族に向けた支援事業になります。
例えば、ひきこもり地域支援センターはすべての都道府県・指定都市にある行政が運営するひきこもりに特化した相談窓口です。社会福祉士や精神保健福祉士、公認心理士等の資格を持つ支援コーディネーターが中心となって、電話や来所等による相談支援を行うほか、同じ悩みを持つ方が集まる居場所の提供をしています。必要に応じてほかの専門機関へのつなぎ役や地域における関係機関との連携も行っています。
地域若者サポートステーション
若者地域サポートステーション(愛称:サポステ)は、働くことに悩みを抱えている15~49歳までの方を対象に、就労に向けた支援を行う機関です。キャリアカウンセラーや就労支援専門員が在籍しており、就労に向けた相談や社会スキルの向上を目的としたワークショップを受けることができます。地域によっては家族向けの相談も実施しており、家族と連携しながら支援が可能です。
その他、ひきこもり支援を行うNPO法人や民間の支援団体も多くあります。これらの団体ではひきこもりの家族向けの交流会や間セリングなども提供されています。第三者の活用は、家族だけでは解決できない課題を解消するきっかけになるのではないでしょうか。
長期化するひきこもりは、本人のみならずご家族にとっても大きな負担となります。しかし、専門家の支援や周囲のサポート、経済的なライフプランを通じて、少しずつ状況を改善していくことは可能です。将来の生活設計や支援制度を知り、経済面でも無理のない範囲で計画しておくことが家族の安心につながります。
今回の事例の坂口さんとその妻、そして啓介さんも、勇気を出して周囲にサポートを求めることが引きこもりを解決する最初の一歩になるかもしれません。
家族以外のつながりを持つことや専門的な支援を活用し、少しずつでもひきこもり解消に向けた行動をしていくことが重要であるといえるでしょう。
〈参照〉
- まず知ろう!「ひきこもりNOW」!|ひきこもりVOICESTATION