返済支援が少子化対策や教育格差の是正にもつながる理由
厚生労働省が2024年11月5日に発表した人口動態統計(概数)によると、2024年上半期(1~6月)に生まれた子どもの数は、前年同期比6.3%減の32万9,998人にとどまり、1年間の出生数が初めて70万人を割る公算だ。
しかし、内閣府が発表した「令和3年度 人生100年時代における結婚・仕事・収入に関する調査報告書」によると、Aさんと同世代の独身の20代の独身女性・男性の結婚願望について、「結婚意思あり・どちらでもよい」と回答した人が全体の8割以上と高い水準にあり、6割が1人以上の子どもを持つことを希望していると回答している※2。
若者に意思や希望はあるが、それが叶わないという社会の状態が、長いあいだ続いてしまった影響が、少子化にもつながっている。さらに、大学進学率の上昇や学費の高騰、所得の伸び悩みを考慮すると、Aさんが考えるように、この負担を若干18歳当時に奨学金を借りた若者の「自己責任」とするのは、あまりにも酷ではないだろうか。
民間企業による奨学金返済支援も始まっている。若者の生活負担を軽減し、将来の選択肢を広げることは、大学生の半数が奨学金に頼る日本社会には不可欠だ。そのために、まずは奨学金制度の現状を正しく理解し、奨学金返済による生活困窮を「自己責任」とする風潮を断ち切り、公的機関や民間も含め社会全体で返済支援を進めていくことが重要である。
〈参考〉
※1 厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」2024-03
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2023/dl/09.pdf
※2 内閣府男女共同参画局「令和3年度 人生100年時代における結婚・仕事・収入に関する調査報告書」2022-04
https://www.gender.go.jp/research/kenkyu/pdf/hyakunen_r03/03.pdf
大野 順也
アクティブアンドカンパニー 代表取締役社長
奨学金バンク創設者