賃貸暮らしを続けている人の中には、定年が近づいてきた時期に、老後を見据えて「自分らしい住まい」を確保したいと思う人もいるのではないでしょうか。しかし、慌てて家を購入すると失敗や後悔をすることになるかもしれません。今回は、猫と暮らすために中古マンションを購入したものの大きな不安を抱えることになってしまった54歳の女性を例に、住まいの選択をどう考えるべきか南真理FPが解説します。
とんでもない失敗をしたかもしれない…。54歳独身女性、念願の「猫との暮らし」のため2,300万円の中古マンション購入するも、半年後「猛烈な不安」に駆られたワケ【FPの助言】
50代で住み替えするなら、賃貸か?家を買うか?
大野さんは家を買うという決断をしましたが、一般的に50代で住み替えを検討するのであれば、賃貸か家を買うか、どちらが最適なのでしょうか。それぞれのメリット・デメリットについて確認していきましょう。
賃貸に住み続けるメリット・デメリット
50代で賃貸に住むメリットは、今後のライフスタイルや健康状態の変化に応じて住まいを変えることができることです。将来の仕事の変化や介護が必要になったときでも賃貸であれば、柔軟に対応できます。また、建物の修繕や設備のメンテナンス費用、固定資産税も負担する必要がなく、予期せぬ出費を避けることができます。住宅ローンを組む必要もなく借金を負うリスクも避けることが可能です。
一方、デメリットは長期的にはコストが高くなることです。賃貸は家賃を一生払い続ける必要があります。ローンのように完済することがないため、総コストが高くなる傾向にあることも頭に入れておきましょう。特に、退職後に収入が減った場合でも、家賃の支払いは継続します。ペットを飼いたいという場合はペット可の物件を選ぶ必要がありますが、家賃は割高になるのが一般的です。
また、大家が家賃を上げる場合や、建物の老朽化によって退去を求められる場合もあります。特に高齢になると、新しい物件を見つけることが難しくなることがあるため注意が必要です。
持ち家を持つメリット・デメリット
次に、50代で家を買うメリットは、自分の住まいが確保でき退去の心配がなくなることです。ローン完済後に住居費の負担が減ることは、退職後に収入が減る可能性が大きいことを考慮すれば、大きな安心材料となります。また、住宅ローン減税などの税制優遇を受けられる場合があり、所得税の一部が控除されるメリットもあります。
それに対し、持ち家を持つデメリットは、住宅ローンの返済が負担になることがあげられます。厚生労働省が公表している「令和4年就労条件の総合調査」によると、定年制を定めている企業は94.4%となっています。
定年制のある企業のうち、定年退職の年齢を定めている企業は96.9%で、そのうち60歳を定年としている企業が72.3%です。(*1)50代で住宅ローンを組むとき、返済期間は20~30年ではなく、収入が確保できる10~15年程度に短縮されるケースもあります。返済期間が短くなることで、月々の返済額が高くなります。
また、持ち家の購入には多額の初期費用や頭金、を多めに支払うケースがあり、老後資金が不足するリスクがあることもデメリットと言えるでしょう。
賃貸か、家を買うかの判断は自分の理想とするライフスタイルを叶える目的で決めたいところですが、将来に渡って経済的に問題ないかどうかも大事なポイントです。メリット・デメリットをあげて比較検討し、自分にとっての最適な住まいを選択できるとよいですね。