「老後資産を増やすため」「生活資金のため」「生活にハリを出すため」など、さまざまな理由から定年後も働く人が増えています。しかし、65歳以降も働く場合には、「在職老齢年金」の仕組みについて知っておく必要がある、とファイナンシャルプランナーの辻本剛士氏はいいます。今回、66歳の谷口徹さん(仮名)の事例をもとに、詳しくみていきましょう。
老後資金を増やすはずが…年金月22万円・66歳男性に年金機構から「年金支給停止」の通知が届いた〈まさかの理由〉【CFPの助言】
給与を減らし、年金を満額受け取ることを決めた徹さん
FPの説明を聞いた徹さんは、「では、3つ目にしようかな。給与を減らして、年金を全額受け取ることにします」といいました。FPは少し意外そうな表情を浮かべましたが、徹さんに迷いはないようです。
その後、徹さんは勤務先に相談。給与を34万8,000円に減額してもらい、それにあわせて勤務日数も週5日から週4日に変更してもらったようです。
あまり悩むことなく決断した様子を見て、FPがその理由を聞くと、徹さんは次のように言いました。
「目減りした資産は元に戻したいと思っているので、やはりある程度の収入は必要です。だけど、一応定年は過ぎているし、自分の時間や家族との時間も大事かな、と」。
徹さんは週に4日働き、残りの3日のうち1日は自身の趣味に、2日は家族との時間に充てることで、生活バランスを整えるようです。
個々のライフスタイルにあわせて、最適な選択を
在職老齢年金は、厚生年金に加入している人が対象となるため、個人事業主やフリーランスの人は在職老齢年金に該当せず、年金の支給停止が生じることはありません。そのため、年金を受け取りながら働く場合は、個人事業主やフリーランスで働いたほうが収入面においては有利になる可能性があります。
今回の谷口さんのケースでは、家族や趣味の時間を優先するために給与の減額を選択しましたが、収入面などを意識したい人であれば、個人事業主やフリーランスとして働くことも選択肢の1つになってくるでしょう。
また、在職老齢年金以外にも、「高年齢雇用継続給付金」を受け取る場合にも年金が支給停止になる可能性があります。
そのため、年金を受け取りながら労働を続ける場合には一度FPなどに相談し、自身のライフスタイルに適した選択肢を見極めることが重要です。
辻本 剛士
ファイナンシャルプランナー