「老後資産を増やすため」「生活資金のため」「生活にハリを出すため」など、さまざまな理由から定年後も働く人が増えています。しかし、65歳以降も働く場合には、「在職老齢年金」の仕組みについて知っておく必要がある、とファイナンシャルプランナーの辻本剛士氏はいいます。今回、66歳の谷口徹さん(仮名)の事例をもとに、詳しくみていきましょう。
老後資金を増やすはずが…年金月22万円・66歳男性に年金機構から「年金支給停止」の通知が届いた〈まさかの理由〉【CFPの助言】
どれがベスト?…徹さんがとれる「3つの選択」
「老後資産を増やすために再就職したのに、年金が減らされるのが納得いきません。なにかいい方法はないでしょうか」と徹さんがFPに尋ねると、FPは「谷口さんには、3つの選択肢があります」と、下記のような説明をしてくれました。
1.現在の雇用形態を維持する
2.雇用形態を業務委託契約に変更してもらう
3.給与を34万8,000円に減額し、年金を全額受け取る
1.現在の雇用形態を維持する
「まず、徹さんはいま1の状況にあります。今後も現在の雇用形態を維持する場合、収入は保たれるものの、おっしゃるように年金の一部が支給停止となり、損をした気持ちになるかもしれません。
2.雇用形態を業務委託契約に変更してもらう
そこで、2つ目の選択肢があります。雇用形態を社員から業務委託契約に変更してもらった場合、徹さんは個人事業主となるため、加入する年金が厚生年金から国民年金に変更となり、在職老齢年金の対象外となります。そのため、年金の支給停止は回避することができるでしょう。
しかし、一方で個人事業主になる場合は帳簿などの会計処理を自身で行い、決算後は確定申告が必要となるため、いままでにはなかった手間がかかります。さらに、社会保険料も会社員のいまよりも増えてしまう可能性があるほか、有給や傷病手当金などがなくなってしまうといったデメリットがあります。
3.給与を34万8,000円に減額し、年金を全額受け取る
そこで、3つ目の選択肢が考えられます。給与を現在の45万円から34万8,000円以下に減額してもらうことで、年金と総報酬月額相当額との合計が50万円以下になりますから、在職老齢年金の対象外となります。
とはいえ、年金は減額されませんが、総額でいえば1を選択したほうが収入は高くなります。したがって、収入を最大限に保ちたい場合は1のほうが有利です。
もし3を選択するならば、給与(総報酬月額相当額)を減らしてもらう代わりに勤務時間などを調整できないか相談してみるのもひとつの手です。
これら3つのなかから、谷口さんのライフスタイルにもっとも適したものを選択するとよいでしょう」。