「老後資産を増やすため」「生活資金のため」「生活にハリを出すため」など、さまざまな理由から定年後も働く人が増えています。しかし、65歳以降も働く場合には、「在職老齢年金」の仕組みについて知っておく必要がある、とファイナンシャルプランナーの辻本剛士氏はいいます。今回、66歳の谷口徹さん(仮名)の事例をもとに、詳しくみていきましょう。
老後資金を増やすはずが…年金月22万円・66歳男性に年金機構から「年金支給停止」の通知が届いた〈まさかの理由〉【CFPの助言】
「年金の一部が支給停止」…突然届いたハガキの内容に動揺
1年ぶりの職場は、ブランクがあったものの、慣れ親しんだ業務内容だったこともあり、徹さんはスムーズに適応することができました。従業員も顔見知りが多く、大きなストレスを感じることなく勤務できています。
そんなある日のことです。いつものように帰宅しポストを開けると、年金事務所からハガキが届いていました。「年金決定通知書・支給額変更通知書」と書いてあります。
夕食後、中身を読んでみると、驚きの内容が書かれていました。なんと、徹さんの年金の一部が支給停止になるというのです。
「支給停止って、いったいどういうことだ?」心当たりのない徹さんは、間違いかもしれないからとりあえず話を聞きに行こうと、妻を連れて年金事務所へ。状況を説明し、なぜこのようなハガキが届いたのか、徹さんが尋ねると、担当者は次のように答えました。
「谷口さまの場合ですと、現在総報酬月額相当額が45万円、厚生年金の月額が15万2,000円あります。これを合わせると60万2,000円と、在職老齢年金の基準である50万円を超えることになるため、届いた通知のとおり、年金の一部(月々5万1,000円)が支給停止になってしまいますね」。
在職老齢年金の仕組み
「在職老齢年金」とは、老齢厚生年金の受給者が厚生年金保険に加入しながら給与収入を得た場合、年金の一部または全額が支給停止になる制度です。支給停止額の計算方法は以下のとおりです※1。
【支給停止額】
(基本月額+総報酬月額相当額-50万円)×2分の1
今回の徹さんのケースをあてはめてみると、
(15万2,000円+45万円-50万円)×2分の1=5万1,000円
徹さんの年金支給停止額は、5万1,000円となります。
担当者が言うように、基本月額(厚生年金)と総報酬月額相当額の合計が50万円を超えてしまうと、在職老齢年金の対象となります。
会社の求めに応じてもう一度働いたのに、年金が減ってしまった……徹さんは腑に落ちません。納得できない徹さんは、以前相続のことでお世話になったファイナンシャルプランナーに相談することにしました。