〈勤務先〉〈年収〉〈返済負担率〉…すべて「問題なし」のはずが
住宅ローン審査でのエピソードを話してくれた阿部裕也さん(仮名・42歳)。30歳を過ぎてから、現在働いている会社に転職。上場する有名企業で、月収は60万円、年収は1,000万円の大台を突破したといいます。購入を考えているのは、都内8,000万円の新築マンション。2,000万円の頭金をいれ、6,000万円のローンを申し込みました。
返済方式は元利均等、金利は0.5%、返済期間は30年だとすると、月々の返済額は17万9,513円。年収に対する返済額の割合である返済負担率は21.5%。20%前後が妥当といわれているので、不動産会社からも「問題ありません。大丈夫です」と太鼓判を押されたといいます。
しかし、後日、不動産の営業担当から、住宅ローン審査の結果は「不可だった」と連絡。
――あんなに大丈夫っていったのに
と担当者を責める気持ちがありつつ、自分でも「有名企業に10年近く勤めているし、年収も1,000万円以上だし、返済負担率も問題ないし……落ちる要素なんてひとつもないんだが」と疑問に思うことばかりです。
前出の国土交通省の調査によると、希望額融資を断られた理由として最も多かったのが「ほかの返済状況や返済履歴」で40.0%。続いて「年齢」「年収」がともに30.0%。「返済負担率」「勤務先の規模」「業種」「健康状態」と続きます。
阿部さん、やはり心当たりがなく、金融関連で働く大学からの友人にアドバイスをもらうことにしたといいます。
――住宅ローンは基本的にスコアリングで、そこで通らないものを専門部署で判断する
そんな住宅ローン審査の基本的な仕組みを教えてくれたあと、阿部さんの情報をひとつひとつチェック。
――これで通らないはずがないのだが……
「あと、住宅ローン審査の直前や審査中に多額の借り入れを行うとアウトの場合がある」と友人がいうと、そこで阿部さん、「あっ」と心当たりがあるような顔。
――家を買うなら、車も買い替えようと。自分へのご褒美も兼ねて、ちょっと高い車を……
――ローン審査前に?
――審査直前に……
金融機関が返済比率を見る際、車のローン返済含めて基準をオーバーしていると、融資されない可能性が高いとか。金融機関が信用情報をみるタイミングにもよるので、必ずしも住宅ローンの審査前に車をローンで購入したらNGとはいえませんが、車の購入は住宅ローン審査後にしたいところです。
「まさか、そんなことで住宅ローンの審査に落ちるなんて……」と、唖然とした表情の阿部さん。「違う金融機関でトライしてみたら。別の金融機関なら通ることも多いし」と友人からもアドバイス。「友人に色々と話を聞いていれば……」と思いつつ、マイホーム実現に向けて敷居直しをしているところだといいます。
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