「こんなはずじゃなかった..」と、退職金の運用で後悔する人は少なくありません。今回ご紹介するのは、銀行員に勧められるまま退職金の半分を使って外貨建て保険に加入した、田中栄太郎さん(仮名)の事例。人生100年時代に備えて資産形成をしたいと思った田中さんに、いったい何が起きたのでしょうか。シニア世代の資産運用の落とし穴とそれを避ける方法を、大手銀行に長年勤務した経験を持つFPの青山創星氏が詳しく説明します。
後悔しかありません…退職金1,000万円で銀行員に勧められるがまま「外貨建て保険」を契約した65歳・元会社員の悲惨な末路【FPの助言】
想定外の円高進行で資産が大きく目減り…外貨建て保険のリスク
それから2年が経ったある日、新聞を見た田中さんは、とある話題に目を奪われました。それは、最近まで1ドル160円近くだった為替レートが急激に150円を割り込み、円高が進んでいるという記事。そして、「契約時よりも円高になると外貨建て保険の受取額は大幅に減少することがある」など、円高が進んだ時の外貨建て保険の為替リスクについて書かれたコラムでした。
それを読んで、自分が契約した外貨建て保険も無関係ではないと気づいた田中さん。銀行員から為替リスクの詳しい説明は受けていなかった気がします。そして、あらためて外貨建て保険についてネットで調べれば、注意喚起をするような記事が多数見つかりました。
焦った田中さんは、すぐに保険を売ってくれた銀行員に連絡を取りました。すると、「為替リスクの説明はしました。そして今解約すると金利上昇と円高の影響で大幅にマイナスになるので、解約はお勧めできません」とのこと。
しかし、その後も円高は進み、1ドル140円に近づいていき、田中さんの不安は増していきます。「お金が減るとは思わなかった」「本当に為替リスクの説明をしてくれたんだっけ?」「もっと円高が進んだらどうなるんだ……」
そんな日々が続くなか、田中さんは「こんなことばかり気にしているのは精神的に良くないな。自分にはこの保険で運用するのは向いていない」と、外貨建て一時払終身保険を中途解約。結果として100万円を失う結果になってしまいました。
お金が増えて保障も得られると思って契約したのに、損をしてしまった。そう落ち込みながら、田中さんは今回の顛末を友人に話しました。すると、「その保険に申し込んだこと自体良くなかったのかもしれないけれど、そのタイミングで解約したのも間違いなんじゃないか?」そう冷静に諭されました。
そう言われて、さらにがっくり肩を落とす田中さんでした。こうならないためには、いったいどうすればよかったのでしょうか。